腰痛と筋肉


腹直筋・外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋・腸腰筋
腰方形筋・腸肋筋・最長筋・横突間筋・肋骨挙筋・棘間筋・棘筋・短・長回旋筋・多裂筋・半棘筋・下後鋸筋・胸腰筋膜
横隔膜
骨盤底筋
大腿直筋・縫工筋・恥骨筋・大腿筋膜張筋・大殿筋・大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋・中殿筋・小殿筋・梨状筋・薄筋・長内転筋・短内転筋・大内転筋
圧痛


腹直筋(Rectus abdominis m)と腰痛

 

 

●腹直筋の概要

腹部前面を縦走する筋肉

体幹屈曲の他、骨盤前縁の挙上(骨盤後傾)に関与する

 

●腹直筋と腰痛との関係

腹直筋の他に腹部を構成する筋肉の筋活動低下は、腹圧を減弱させ腰部にかかるストレスを増大させる

腹壁の筋、横隔膜、骨盤底筋が協調的に収縮して腹圧が高まると、上位腰椎にかかる軸圧や剪断力が50%、下位腰椎ではおよそ30%が軽減されるといわれている。固有背筋の発揮する力も50%以上軽減されることから、腹部筋肉の強化は脊柱疾患の予防や治療には重要

股関節屈筋群の緊張で骨盤が前捻するが、この働きに対抗できるのは腹筋だけ。股関節伸筋の能動的な収縮で骨盤後傾はあまり起こらないため、骨盤後傾のためには腹筋強化が必要

 

●起始 ─ 停止

起始

停止

恥骨

第5〜第7肋軟骨, 胸骨の剣状突起

 

●作用

体幹の屈曲

骨盤前縁の挙上

呼気の補助(腹圧負荷)

 

●神経支配

肋間神経(T5-T12)

 

●筋力強化

※すべり症を有する患者の腹筋訓練では、腹直筋の収縮に伴い骨盤が後捻して椎体階段状変形が増悪することもあるため、骨盤を固定した状態での腹直筋収縮をおこなう

下腹部を収縮させる(1センチ程度へこませる)

その状態を維持したまま、床から肩数センチ浮かせる

10秒保持したらゆっくりと上体をもどす

 

※腹筋運動で頸・背・腰部などに痛みがでる場合、その部の筋肉が過剰に働いている可能性がある。そのような場合は椅子の上に股・膝関節90°位で脚を載せて、胸の前で手を組んで腹筋をするとよい。上体は肩甲骨が床から離れるくらい持ち上がればよい。

下腹部を収縮させる(1センチ程度へこませる)

その状態を維持したまま、両下肢を数センチ持ち上げる

10秒保持したらゆっくりと両下肢を下す

背臥位にて、股関節と膝関節90°屈曲させる

ゆっくりと上体を持ち上げ、両膝を顔に引き寄せる

その位置を保持したまま、深呼吸をしながら10秒を数える

10秒保持したらゆっくりと上体を戻す

うつ伏せになり、両腕を胸の前面に折りたたむ

骨盤と腰を動かないように固定したまま、腕を床を押しつけて、床から体を持ち上げる

体を持ち上げたまま大きく深呼吸をし10秒数えたら、上体を戻す

 

ボールに座る

ボールを転がして背中に当たるようにする

体と床が平行となる位置で静止

お腹に力を入れながら、背中でボールを下に押す

大きく深呼吸をしながら10秒保持し、その後に力を抜く

 

首に負担がかかる場合は、手で支える

この運動は殿部、腹部、腰部脊柱起立筋群、胸部脊柱起立筋群の協調性獲得にも有用

 

●ストレッチ

うつぶせの状態から床を手で押して、上半身を持ち上げる

腹直筋の伸張が感じられたら、大きく深呼吸をする

息を吐くのと同時に、筋肉を弛緩させて更に伸ばす

 

腰・下肢に痛みやしびれが出る場合は中止

 

●腹直筋の運動点(モーターポイント)

 

運動点とは運動神経の末梢がその支配する筋に進入する点あり、腹直筋ではから肋間神経(T5-T12)が侵入する

運動点での圧痛はより近位の病巣を表すといわれている。

運動点への経皮的電気刺激は、わずかな刺激量で筋の著明収縮が得られるため、廃用性萎縮の予防に利用できる

 

 

●腹直筋のトリガーポイント

腹直筋に現れるトリガーポイント。×印の筋膜内に索状硬結が生じると、赤塗りの所に痛みが現れる。

この索状硬結を圧すると痛みが再現され、局所麻酔薬の注入で除痛される

 

 

 

外腹斜筋(Abdominal external oblique m)と腰痛

 

 

●外腹斜筋の概要

腹壁の側面を内腹斜筋と共に覆う

外腹斜筋は前下方から後上方へ走行するが、内腹斜筋は反対に前上方から後下方へ走行する

 

●外腹斜筋と腰痛との関係

横隔膜は腹壁の筋、骨盤底筋と強調して腹圧を高め、腰の負担を軽減する。

詳しくは腹直筋を参照

 

●起始 ─ 停止

起始

停止

第5〜第12肋骨外側面

腸骨稜、鼠径靱帯、白線

 

●作用

両側収縮

体幹屈曲

骨盤前縁の挙上

呼気の補助(腹圧負荷)

片側収縮

収縮側への側屈、反対側への回旋

 

●神経支配

肋間神経(T5-T12)、腸骨下腹神経、腸骨鼠径神経

 

●臨床

腰椎の左凸側弯がみられる場合、体幹の右側屈が出来ないため、右側の腹斜筋が収縮不全を起こしやすい。

腹斜筋の収縮を目的とした骨盤の片側挙上訓練を行なう際、下肢神経症状を有する患者の場合では、挙上側の腰椎椎間孔が狭まり神経症状が誘発される事がある。神経症状が出るようであれば等尺性収縮運動に切り替える。

 

●外腹斜筋の筋力強化

1. 背臥位から、脊柱を真っ直ぐにしたまま肩を数センチ持ち上げる

2. 肩を持ち上げた位置から体幹を右もしくは左に回旋させる

3. 回旋させた状態を10秒間維持したら、体を戻す

 

4. 右に回旋させると左外腹斜筋・右内腹斜筋が収縮する

5. 逆に左に回旋させると右外腹斜筋・左内腹斜筋が収縮する

1. 背臥位から上体を起こす際に肘と膝を近づける

2. 対側の肘と膝を触れさせたら、その姿勢を10秒間保持する

3. 息を吐きながら体を戻す

1. 背臥位で、股関節・膝関節を90°屈曲位

2. この姿勢で、体を起こしながら上体を捻じり対側の膝に触れる

3. その姿勢を10秒間保持しながら深呼吸をする

4. 息を吐きながら体を戻す

1. 側臥位で、上になった側の脇腹を手で触れながら、体を持ち上げる

2. 手で触れている筋肉の収縮を感じながら、その姿勢を保持

3. 静止したまま深呼吸をする

4. 息を吐くのと同時に上体を戻す

1. 側臥位で、下側になった腕で床を押し、体を床から持ち上げる

2. 下になった側の腹斜筋が収縮するので、その姿勢を保持

3. 静止したまま深呼吸をし、息を吐くのと同時に上体を戻す

 

お尻を後ろへひかないように注意

難しければ、股・膝関節を屈曲位で始めてもいい

 

●外腹斜筋のストレッチ

1. 腹臥位から手で床を押して、上体を持ち上げる

2. 左の腹斜筋を伸ばす場合は、右に上体を捻じる

3. 左の腹斜筋が伸張したら、大きく深呼吸をする

4. 息を吐くのと同時に、筋肉を弛緩させて更に伸ばす

 

腰・下肢に痛みやしびれが出る場合は中止

1. 正座の状態から体を大きく前方へ倒す

2. この時伸ばす側と逆の肩を床に付けて体を捻じった姿勢をとる

3. この姿勢で、上になっている腕を、頭の方向へ伸ばす

 

この図では右側の腹斜筋が伸びている

筋肉の伸張を感じら静止して時間をかけて伸ばす

1. パートナーと一緒に行う方法

2. 伸ばされる人は、伸ばしてもらう側を上にして側臥位となる

3. 下側の股関節は90°屈曲位とする

4. 伸ばす人は、胸部を前方へ、骨盤を後方へ押し、タオルを捻じるような感じで、腹部を捻じりながら伸ばす

5. 伸ばしたら10秒静止


●腹斜筋の運動点(モーターポイント)

 

運動点とは運動神経の末梢がその支配する筋に進入する点あり、外腹斜筋ではから肋間神経(T5-T12)腸骨下腹神経、腸骨鼠径神経などが侵入する

運動点での圧痛はより近位の病巣を表すといわれている。

運動点への経皮的電気刺激は、わずかな刺激量で筋の著明収縮が得られるため、廃用性萎縮の予防に利用できる

 

 

●腹斜筋のトリガーポイント

腹斜筋に現れるトリガーポイント。×印の筋膜内に索状硬結が生じると、赤塗りの所に痛みが現れる。

この索状硬結を圧すると痛みが再現され、局所麻酔薬の注入で除痛される



内腹斜筋(Abdominal internal oblique m)と腰痛

 

 

●概要

腹壁の側面を外腹斜筋と共に覆う

内腹斜筋は前上方から後下方へ走行するするが、外腹斜筋は反対に前下方から後上方へ走行

 

●内腹斜筋と腰痛との関係

横隔膜は腹壁の筋、骨盤底筋と強調して腹圧を高め、腰の負担を軽減する。

詳しくは腹直筋の項を参照

 

●起始 ─ 停止                

起始

停止

第10〜第12肋骨下縁

腸骨稜、上前腸骨棘、鼠径靱帯

 

●作用

両側収縮

体幹屈曲

骨盤前縁の挙上

呼気の補助(腹圧負荷)

片側収縮

収縮側への側屈、同側への回旋

 

●神経支配

肋間神経(T8-T12)

腸骨下腹神経

腸骨鼠径神経

                  

●臨床

腰椎の左凸側弯がみられる場合、体幹の右側屈が出来ないため、右側の腹斜筋が収縮不全を起こしやすい。

腹斜筋の収縮を目的とした骨盤の片側挙上訓練を行なう際、下肢神経症状を有する患者の場合では、挙上側の腰椎椎間孔が狭まり神経症状が誘発される事がある。神経症状が出るようであれば等尺性収縮運動に切り替える。

●内腹斜筋の筋力強化 
外腹斜筋の筋力強化を参照

 

内腹斜筋のストレッチ

外腹斜筋のストレッチを参照

 

 

●腹斜筋のトリガーポイント

腹斜筋に現れるトリガーポイント。×印の筋膜内に索状硬結が生じると、赤塗りの所に痛みが現れる。

この索状硬結を圧すると痛みが再現され、局所麻酔薬の注入で除痛される

 

 

 

 

腹横筋(Abdominal transversus m)と腰痛

 

 

●概要

激しい運動の呼気の際に働く筋肉

 

●腹横筋と腰痛の関係

1. 腹横筋は上・下肢運動に先立って一番最初に収縮する体幹筋である。収縮をし腹圧が高まることで腰椎が保護される。腰痛患者ではこの上・下肢運動直前に、腹横筋の筋活動がみられない場合が多く、腰部ストレスの原因となる。

2. 上・下肢運動直前の筋活動を確認したい場合は、立位からゆっくりと片足を挙げるといい。この動 作で下腹部の腹横筋の反応が確認できる。

3. 腹直筋の収縮はL2、L4およびL3、L5の棘突起を接近させるような垂直方向の張力を生じ、さらにこの棘突起間の離解に抵抗することで、結果的に腰椎の屈曲に抵抗し支持するように働く

4. 腹横筋全体の構造をみると、この筋は水平に走行して腰部の伸筋と屈筋を結ぶ変わった筋肉であることが分かる。これは直接腰部の運動に関与するというよりも、腹腔の硬さを調節することで体幹の安定性を制御している証拠ともいえる

 

●起始 ─ 停止

起始

停止

第7−12肋軟骨

胸腰筋膜

白線

 

●作用

強制呼気運動の補助

体幹の同側回旋

腹部緊張維持

四肢運動の直前に収縮し、腰椎を保護する

 

●神経支配

肋間神経(T5-T12)、腸骨下腹神経、腸骨鼠径神経、陰部大腿神経

 

●腹横筋の筋力強化方法

1. 背臥位にて下腹部を手指で触れる

2. 安静呼吸の最終呼気時に下腹部に力をいれる

3. 下腹部を収縮させながら安静呼吸を続ける

 

※背臥位で出来るようになったら、腹臥位、座位、立位の順で練習を重ねていく

1. 立位で下腹部に力を入れ腹横筋を収縮させる

2. 収縮をさせたまま両腕を前方へ上げる

3. これ以上は上がらないという所まで来たら静止して10秒数える(安静呼吸は維持したまま)

4. 10秒数えたらゆっくりと腕を戻す

1. 腰部下のスタビライザーを60mmHgに加圧

2. 60mmHg維持した状態で腹直筋を収縮させ安静呼吸を行う

 

60mmHg維持しながら安静呼吸が出来るようになったら、同時に下肢の屈伸運動なども加える

収縮不全の方の訓練

1. 腹臥位で、お腹の下にスタビライザーを置き70mmHgに加圧

2. 息を吐いた後にゆっくりとお腹を引き、その位置で保持する

3. この時圧が4ー10mHg低下する(圧の低下が2mmHg以下であると、選択的収縮が行えていない状態である)

4. 保持して10秒数えたら、お腹を戻す

1. 背臥位

2. 上体を回旋させるようにして、片側の肩を床に押し付ける

3. 肩を床に押し付けたまま10秒保持したら力を抜く

 

肩を床に押し付けている側の腹直筋が収縮する

 

●その他の腹横筋の筋力強化

腹横筋は最大随意伸展時に、最大に近い活動を示すため、腰椎の伸展制限などがみられない方であれば、伸展による筋力訓練をおこなってもよい。

立位患者の体幹を、セラピストが前後・左右・回旋を加えることでも腹横筋、腹直筋、内外腹斜筋、脊柱起立筋の筋活動が得られる

 

 

 

 

 

腸腰筋(iliopsoas)と腰痛

 

 

●腸腰筋の概要

腸腰筋は腰椎から発生する大腰筋と腸骨から発生する腸骨筋からなる

大腿直筋、縫工筋、大腿筋膜張筋と共に股関節の屈筋群に分類される

同筋は遅筋線維の多い姿勢筋である

 

●腸腰筋と腰痛との関係

1. 腸腰筋膿瘍による腰痛は、原発性ではDMやステロイド使用、低栄養。続発性では虫垂炎、尿路感染などが原因となる。整形外科疾患では可能性脊椎炎に併発する

2. 股関節屈筋群(腸腰筋を含む)の緊張や短縮で骨盤前捻すると、腰椎の過前弯が生じ腰痛の原因となる

3. 同筋は遅筋の割合が多いものの病的な萎縮を生じやすく、萎縮は骨盤や股関節の姿勢安定性を破綻させる

4. 腸腰筋(特に腸骨筋)の片側の短縮は腸骨を前捻させる。この腸骨の左右非対称性の捻じれは、腰部ストレスの原因になるといわれる

5. 腸腰筋(特に大腰筋)の片側の短縮は腰椎を側屈させ、姿勢性の側弯を生じさせる。腰椎側屈側の骨盤が挙上すると腰仙関節の過剰な側屈が生じ、椎間孔で神経根が圧迫されることもある

6. 腹筋運動の際にこの筋を主動的に作用させてしまうと、姿勢性腰痛を強くすることがあるので注意。腹筋運動は、床から肩が数センチ上がる程度で問題ない。

7. 立位姿勢を正すために骨盤を前に(股関節伸展)出して背筋を伸ばす人がいるが、このような股関節伸展位は小結節に停止する腸腰筋を緊張させ、腰椎の過前弯を強くする。ハイヒールで腰椎過前弯が生じるのもこれと同じ仕組みである

8. 背臥位で下肢挙上などにも作用するため、背臥位で行われる下肢伸展挙上訓練でなどでは、腰部を強く前方へ引っ張られて腰の痛みにつながることがある

 

●起始 ─ 停止                          

起始

停止

腸骨筋:腸骨窩

大腰筋:T12L5肋骨突起

大腿骨の小転子

 

●作用

股関節 :屈曲・外旋

腰椎  :片側の収縮で体幹を側屈

     両側収縮で背臥位から体幹を起こす

 

●神経支配

腰神経叢および大腿神経(大腰筋L1-L3,腸骨筋L2-L4)

 

●血管支配

腸腰動脈、深腸骨回旋動脈

腸骨筋は仙腸関節前面付近からの腸腰動脈と、鼠径靭帯付近からの深腸骨回旋動脈とによって血液が供給される

血管は腸骨窩で腸骨筋に分布するため、腸骨窩のマッサージで血液供給は促される

筋力訓練前にマッサージを行い筋肉内の血液量を増やしておけば、筋活動を効率的に引き出せるかもしれない

 

●臨床

腸腰筋の短縮はトーマステストで確認できる。背臥位で一側の股関節を最大屈曲させて骨盤を後捻させるとき、骨盤の後捻と一緒に反対側の股関節が屈曲していくものを陽性

両側の腸腰筋が機能低下を生じると、腹筋に障害が無くても背臥位から体幹を持ち上げることは出来なくなる

座位姿勢の多い日常生活をおくっていたり、慢性的に動けない高齢者などでは短縮を生じやすい

腸腰筋の活動は股関節の伸展制限を有し、股関節過伸展障害の予防に働く

 

●腸腰筋の筋力強化

【目的】

腸腰筋萎縮や機能低下は骨盤や股関節の姿勢安定性を破綻させる。姿勢制御の低下に伴う代償運動は腰痛の発生原因となるため、筋力の強化や機能維持は重要となる

【方法】

腸腰筋の強化は、立位で大腿を上げる運動がよい。最初は膝を曲げて行い、筋力の増加に伴って膝を伸ばして行うと徐々に負荷をかけることが出来る。

注★上体を引き上げるような腹筋運動でこの筋を主動的に作用させてしまうと、腰痛の原因にもなるため、そのような運動では、肩が床から数センチ上がる程度とする

背臥位で行われる下肢伸展挙上訓練でも腰に負荷がかかるため注意しながら行う

 

●腸腰筋のストレッチ

【目的】

座位姿勢の多い日常生活をおくっていたり、慢性的に動けない高齢者などでは短縮を生じやすいので、定期的なストレッチで正常な機能を保つことが必要

【方法①】(右のストレッチ)

患者はベッドの端に殿部が来るように背臥位となる。セラピストは患者の左股・膝関節を最大屈曲させて下肢を体幹に近づける。次いで右股関節を伸展させて腸腰筋を伸ばす。可能であれば鼠径靭帯中央1/2を走行する大腿動脈・静脈・神経を避け、直ぐ外側部を走行する腸腰筋を手掌で圧迫しながら伸張をするとより効果が高い

【方法②】(右のストレッチ)

患者腹臥位で両下肢伸展位。セラピストは一方の手で右殿部を固定し、もう一方の手で右下肢を持ち上げて股関節を伸展させる。股関節の伸展に伴い骨盤が前捻しないように、殿部に置いた手掌で骨盤を後捻方向に圧するとよい。

注★股関節の伸展とともに腰椎が前弯する場合は、腰椎を後湾方向へ押しつけるように指示し、腰椎後弯を保ったままで股関節を伸展させる

股関節の伸展に伴い同側の腸骨が前捻してしまう場合は、セラピストは上前腸骨棘を手で固定して腸骨の前捻を防止したうえで、股関節の伸展をおこなう

●腸腰筋のマッサージ

【腸腰筋】(右マッサージ)

患者背臥位として右股・膝関節を屈曲位とする。セラピストは施術側に立ち、一方の手指で患者の鼠径靭帯中央部の大腿動脈の外側を圧する。他方の手で患者の下肢を外転方向に倒して元に戻す。患者の下肢の運動に伴って腸腰筋の滑走が確認できるので、筋腹を手指でマッサージしながら、下肢の外転・内転運動を繰り返す。

注★この部は大腿動脈・静脈・神経が走行するため強力な圧を加えないこと

【腸腰筋】(右マッサージ)

患者背臥位。セラピストは施術側に立ち、両母指を重ねて患者の鼠径靭帯中央部の5cm遠位、大腿直筋ん内側縁に置く。筋肉を直圧して腸腰筋付着部である小転子の骨隆起を中心に揉捻する。

【腸骨筋】(右マッサージ)

患者背臥位。セラピストは施術側に立ち、両側の手指もしくは母指で、患者の上前腸骨棘の内側から腸骨窩に圧を加えて、腸骨筋をマッサージする

【大腰筋】(右マッサージ)

患者背臥位として右股・膝関節を屈曲位とする。セラピストは患者の臍の2〜3横指外側部を一方の手指で圧を加えて大腰筋を触知する。他方の手で屈曲位の右下肢を屈伸運動させる。股関節の屈伸に伴って大腰筋の滑走が確認できるので、筋腹を狙ってマッサージを行う。

【マッサージの強さ】

マッサージを行う場所は内臓や神経などがあるため、マッサージの強度は軽めでよい。筋膜を滑らせるような繰り返しの刺激で、筋の深部に押し込むような運動はおこさない。

 

●腸腰筋のトリガーポイント

腸腰筋に現れるトリガーポイント。×印の筋膜内に索状硬結が生じると、赤塗りの所に痛みが現れる。

この索状硬結を圧すると痛みが再現され、局所麻酔薬の注入で除痛される

 

 

 

固有背筋

 

腰方形筋(Quadratus lumborum m)と腰痛

 

 

●概要

腰方形筋の外側線維は椎骨に付着せず、腸骨から第12肋骨へ走行する。腰椎の運動に関与する。

内側線維は腸骨から第1−4腰椎肋骨突起へ付着し、腰椎の分節的安定性に関与していると考えられている。

腰方形筋部外側線維を損傷している場合、第12肋骨から外側線維を触知して行けば圧痛部位を確認可能。内側線維の損傷では重なっている胸腰筋膜や脊柱起立筋などとの判別は困難。

  

 

●腰方形筋と腰痛との関係

1. 腰部の第12肋骨と腸骨稜の間には深部に骨性基板がなく、補強するのは3層の腹筋群の他、広背筋と腰方形筋しかない。このことが腰方形筋の易疲労性となり腰痛の原因となる

2. 腰方形短縮、腹斜筋の短縮、脊椎の可動性低下などは、腰椎の側屈制限につながる。この運動制限を放置すると、側屈運動に関与する筋群の退縮につながる

3. 腰方形筋に痛みを訴える方の多くに、同筋の緊張や膨隆を認める。筋肉の過緊張で筋腹が膨隆すると言われているが、膨隆により筋内圧が上昇することで痛みが生じる

4. 呼気作用があるため、いきみや咳で痛みは増強

5. 腰部コルセットは腹圧が高まり腰椎が安定するので、同筋の負担軽減となる

6. 体幹の側屈筋であるので、損傷側への側屈で収縮時痛がみられる

 

●起始 ─ 停止                          

起始

停止

腸骨稜

第12肋骨突起

第1−4腰椎肋骨突起

 

●作用

両側:強制呼気

片側:同側への体幹側屈

 

●神経支配

肋下神経(第12肋間神経)

 

●腰方形筋のストレッチ

※右腰方形筋のストレッチ方法を記載する

【方法①】

ベッドの端もしくは椅子に座位となり、右上肢を挙上させて体幹を左側屈させる。側屈した際に右臀部が座面から離れないように注意する。側屈をして筋肉の伸張を感じた所で、10秒間静止したら体を戻す

【方法②】

腰方形筋の起始・停止を近づけるように、患者座位で、腰部伸展・右側屈位。セラピストは患者の背面左に座り1-3指で腰方形筋を把持する。患者は腰方形筋の起始と停止を引き離すように、体幹を屈曲・左側屈させる

【方法③】

患者腹臥位。セラピストは患者の右側面に立ち、右手で患者の右腸骨稜を固定し、左手を最初の手と交差させて第7〜11肋骨に置く。両手を反対方向へ牽引して腰方形筋を伸長させる。

注★このとき肋骨に置いた手を、床方向へ強く圧すると肋骨が骨折することがあるので注意。特に第12肋骨は浮遊肋で折れやすい。また骨粗鬆症やステロイド薬を服用している患者では軽微な外力で容易に折れる。

 

●腰方形筋の筋力強化

【方法①】

側臥位から、床側の上肢で上体を持ち上げるサイドブリッジで、下方の腰方形筋・腹斜筋が強化される。このとき、筋線維に圧を加えながら行うと収縮を促しやすい。

※最初は股・膝関節軽度屈曲位で体幹だけを持ち上げる運動をおこない、慣れてきたら、股・膝関節伸展位で体幹と下肢を持ち上げる。

【方法②】
片側(右)の手で重錘を持つ。重錘を持ったまま対側(左)へ体幹を側屈させる。この運動で側屈側の腰方形筋が強化される

※この運動では側屈側の内・外腹斜筋も強化される

 

●腰方形筋のマッサージ

【外側線維】

患者腹臥位。セラピストは施術側に立ち、腹側部をつかむように母指を腰方形筋に当て四指を腹部に添える。腸骨稜から第12肋骨にかけて腰方形筋を順次母指で圧していく

※このとき筋肉内に圧痛点がないか調べる。圧痛点に硬結がみられるときは重点的に圧を加える。

【外側線維】

【方法①】を側臥位で行う。このとき上になっている側の筋肉を圧していくが、空いている手で腸骨を下肢長軸方向へ牽引しながら行うと、筋肉に伸張と圧迫を同時に加えられる

【外側線維】

患者腹臥位。セラピストは施術側に立ち、腸骨稜から第12肋骨にかけて走行する腰方形筋外側線維を確認する。確認したら両母指で腹部外側方向から脊椎方向に向かって順次加圧する

【内側線維】

患者腹臥位でセラピストは施術側に立る。一側の肘頭を、棘突起の2横指外側の腰方形筋内側線維の直上に置いて、腸骨から第12肋骨に向かって滑らせる。

※腰方形筋内側線維の外層には脊柱起立筋が走行するため、間接的に腰方形筋をマッサージすることになる

注★肘で圧迫をしていくため、第12肋骨および横突起の骨折に注意すること

【全体】

患者腹臥位。セラピストは非施術側に立ち、手掌を腸骨と第12肋骨の間に置く。手掌で腰方形筋を床方向に圧し、手根をゆっくりと腹部外側方向へ滑らせていく。手掌が腹部を離れるまで、筋肉全体を圧し続ける

 

●腰方形筋のトリガーポイント

腰方形筋に現れるトリガーポイント。×印の筋膜内に索状硬結が生じると、赤塗りの所に痛みが現れる。

この索状硬結を圧すると痛みが再現され、局所麻酔薬の注入で除痛される

 

 

 

腸肋筋 (Iliocostalis m)と腰痛

 

※腰腸肋筋のみ記載(その他、頸・胸腸肋筋がある)

 

 

●概要

腸肋筋、最長筋、棘筋をまとめて、脊柱起立筋と呼ぶ

脊柱起立筋の一つで最外層に位置する

腰腸肋筋は、仙骨から中部及び下部肋骨および肋骨角に付着し、肋横突関節や肋椎関節の運動に関与する

背骨の両脇に盛り上がった筋肉が脊柱起立筋であるが、その外側を触れた状態で前後屈してもらうと、筋の収縮を触知できる

 

●腰腸肋筋と腰痛との関係

第1.2.3腰神経後枝の各外側枝は、横突起間より出て外下方へ走り腸腰筋を貫き大転子の辺りに達する。これが上殿皮神経。腸腰筋の緊張により外側枝が絞扼されると腸骨稜から大転子部にかけての痛みの原因となる。外側枝が腸肋筋を貫く場所はL3-5棘突起の3横指外側部で図の部位3あたりである。

この神経による腰痛と考えられる場合は、腸腰筋の筋緊張緩和や神経の滑走運動を行う。

神経の滑走運動の方法

①腰腸肋筋を把持し神経の走行と並行方向に他動的に動かす。上内方と下外方に十数回繰り返す。

②滑走させる側(右)を上にした側臥位で、セラピストは右の骨盤を末梢に牽引する。患者は骨盤の牽引に合わせて、右下肢と右側腹部を末梢方向へ伸ばす。これを十数回繰り返す。

脊髄神経後枝外側皮枝の分布領域

外側枝の腸肋筋貫通部は、部位3あたり

 

 

第4.5腰神経後枝の各外側枝は、(腰内側・外側)横突間筋と棘筋に分布し神経は終了するため、通常知覚には関与しない

 

●起始 ─ 停止

起始

停止

腸骨稜、仙骨、下位腰椎の棘突起、胸腰筋膜

第7〜第12肋骨の肋骨角下縁

 

●作用

両側:腰椎伸展

片側:腰椎を同側へ屈曲

 

●神経支配

脊髄神経後枝

胸神経(頚腸肋筋・胸腸肋筋)

腰神経(腰腸肋筋)

 

●腰腸肋筋のストレッチ

【方法】(右側)

患者座位で、腸肋筋の起始・停止を近づけるように、腰部伸展。セラピストは患者の背面左に座り母指で腸肋筋を腸骨稜方向へ圧して固定する。患者は腸肋筋の起始と停止を引き離すように、体幹を屈曲・左側屈・左回旋させる

 

 

●腰腸肋筋の筋力強化

【方法①】

前屈位でバーベルを両手で握り、腕を伸ばしたままゆっくりと上体を持ち上げるデッド・リフトで両側の脊柱起立筋が鍛えられる。上体を持ち上げるときに腰部を過伸展させると腰を痛めるため注意

【方法②】

四つ這いから、一方の上肢を挙上させ保持する運動では対側の脊柱起立筋を強化できる。慣れてきたら同時に対側の下肢を尾側方向へ伸展させるとより強化できる。最近では上肢を挙上位で保持させるのではなく、肩関節外転90°位で保持させる方が効果的に強化できると言われている。

 

●腰腸肋筋のマッサージ

【方法】

患者腹臥位。セラピストは患者の側面に立ち母指を第12肋骨下縁に添える。しっかりと筋肉を圧したら、そのまま仙骨底部まで指を滑らせる

 

●腸肋筋のトリガーポイント

腸肋筋に現れるトリガーポイント。×印の筋膜内に索状硬結が生じると、赤塗りの所に痛みが現れる。

この索状硬結を圧すると痛みが再現され、局所麻酔薬の注入で除痛される

  

 

 

最長筋(Longissimus m)と腰痛

 

※胸最長筋のみ記載(その他、頸・胸最長筋がある)

 

 

●概要

腸肋筋、最長筋、棘筋をまとめて、脊柱起立筋と呼ぶ

腸肋筋の下部に位置し脊椎の伸展、側屈、回旋の一連の動きに作用

仙骨部から胸腰部の脊椎を安定化させる

最長筋の過緊張が胸部・頸部へと波及すると、腰背部および頸部痛の痛みとなって現れる

 

●胸最長筋と腰痛との関係

●起始 ─ 停止

起始

停止

腰椎の横突起

全ての胸椎横突起と肋骨

 

●作用

両側:腰椎伸展

片側:腰椎を同側へ屈曲

 

●神経支配

脊髄神経後枝(胸神経) 

 

●胸最長筋のストレッチ

【方法】(右のストレッチ)

患者座位で、最長筋の起始・停止を近づけるように、腰部伸展

セラピストは患者の背面左に座り母指で最長筋を腸骨稜方向へ圧して固定する

患者は最長筋の起始と停止を引き離すように、体幹を屈曲させる

 

●胸最長筋の筋力強化

腸肋筋と同様の訓練で鍛えることが出来る

 

●胸最長筋のマッサージ

【方法】

患者腹臥位。セラピストは患者の側面に立ち母指を第5腰椎横突起に置く。しっかりと筋肉を圧しながら第1胸椎棘突起の2横指外側部めがけて指を滑らせる。マッサージの開始地点を、順次第5腰椎から第1腰椎に移動しながら、同様の手技を繰り返す

 

●胸最長筋のトリガーポイント

胸最長筋に現れるトリガーポイント。×印の筋膜内に索状硬結が生じると、赤塗りの所に痛みが現れる。

この索状硬結を圧すると痛みが再現され、局所麻酔薬の注入で除痛される

 

 

 

横突間筋 (Intertransversarii m)と腰痛

 

※腰内・外側横突間筋のみ記載

 

 

●概要

横突間筋は、横突起と肋骨突起とを結ぶ筋肉

最下位に存在する筋は、第5腰椎の肋骨突起と腸骨粗面をむすぶ

側屈の作用があるが、脊椎は単純に側屈することは無く、伸展と回旋を伴う。つまり伸展、側屈、回旋の一連の動きの中で作用するといえる

●腰内・外側横突間筋と腰痛との関係

●起始 ─ 停止

起始

停止

椎骨の肋骨突起

隣接する椎骨の肋骨突起

 

●作用

両側:腰椎伸展

片側:腰椎を同側へ屈曲

 

●神経支配

腰内側横突間筋:脊髄神経後枝

腰外側横突間筋:脊髄神経前枝

 

●腰内・外側横突間筋のストレッチ

【方法】

1. 患者座位で、横突間筋の起始・停止を近づけるように、腰部伸展・右側屈

2. セラピストは患者の背面左に座り母指で肋骨突起を仙骨方向へ圧して固定する(筋肉や脂肪組織が厚く肋骨突起が触れられないときは、腸骨を固定する)

3. 患者は横突間筋の起始(肋骨突起)と停止(一つ上の肋骨突起)を引き離すように、体幹を屈曲・左側屈させる

 

 

●腰内・外側横突間筋の筋力強化

【方法】

 

 

 

 

 

肋骨挙筋 (Levatores costarum m)と腰痛

 

 

 

●概要

肋骨挙筋は、文字通り肋骨を引き上げる筋肉で、短肋骨挙筋と長肋骨挙筋に分かれる

短肋間挙筋は、一つ下の肋骨に付着し、長肋間挙筋は二つ下の肋骨に付着

深層に存在する筋肉で触診は不可

動脈は肋間動脈背枝から受ける

 

肋骨挙筋と腰痛との関係

 

●起始 ─ 停止

起始

停止

C7,T1〜T11の椎体の横突起

2つ下位の肋骨の上縁の肋骨結節・肋骨角

 

●作用

肋骨の引き上げ

吸気

両側:胸椎伸展

片側:脊柱の同側への側屈、反対側への回旋

 

●神経支配

胸神経の前枝と後枝

 

●肋骨挙筋のストレッチ

【方法】

患者座位で、肋骨挙筋の起始・停止を近づけるように、腰部伸展・同側へ側屈・反対側回旋

セラピストは患者の背面左に座り母指で肋骨挙筋を腸骨稜方向へ圧して固定する

患者は肋骨挙筋の起始と停止を引き離すように、体幹を屈曲・反対側へ側屈・同側回旋させる

 

 

●肋骨挙筋の筋力強化

【方法】

 

 

 

 

 

 

 

棘間筋(Interspinales m)と腰痛

 

※腰棘間筋のみ記載(その他、頸棘間筋がある)

 

 

 

●概要

脊椎に存在し棘と棘を結ぶ最小の深層筋

脊椎を屈曲させ、棘突起間に指を滑らすと、緊張が感じられる

 

●腰棘間筋と腰痛との関係

しばしばこの筋肉に圧痛の存在が見つかる

腰椎の急激な屈曲および可動域を超えた屈曲で損傷する

棘間筋の緊張で腰椎の屈曲制限が生じる

 

●起始 ─ 停止

起始

停止

椎骨の棘突起

隣接する椎骨の棘突起

 

●作用

両側:腰椎伸展

 

●神経支配

脊髄神経後枝

 

●ストレッチ

【方法】

患者座位で、棘間筋の起始・停止を近づけるように、腰部伸展

セラピストは患者の背面に座り母指で棘突起を尾側方向へ圧して固定する

患者は上下の棘突起間を引き離すように、体幹を屈曲させる

 

 

患者腹臥位で、股関節・膝関節を屈曲位とする

セラピストは患者前面から、患者の背部に手を回して一方の2.3指で棘突起を固定し、他方の2.3指で隣接する棘突起を固定する

両肘で患者の体幹を屈曲させるようにしながら、固定した2つの棘突起間を引き離すように対側へ牽引する。

 

●筋力強化

【方法】

 

 

 

 

 

 

棘筋(Spinalis m)と腰痛

 

※胸棘筋のみ記載(その他、頸棘筋がある)

 

 

●概要

腸肋筋、最長筋、棘筋をまとめて、脊柱起立筋と呼ぶ

棘筋は、脊柱起立筋の最内層に存在し、半棘筋の上部に位置する

 

●棘筋と腰痛との関係

胸棘筋の緊張や短縮で胸椎の運動が制限されると、腰椎での代償運動が生じて腰部のストレスの原因となる

●起始 ─ 停止

起始

停止

L1-2Th10-12の棘突起

Th2-8の棘突起

 

●作用

両側:脊柱の伸展

片側:脊柱を同側へ屈曲

 

●神経支配

脊髄神経後枝

 

●ストレッチ

【方法】

 

●筋力強化

【方法】

 

●胸棘筋のマッサージ

【方法】

患者腹臥位。セラピストは患者の側面に立ち、母指を第2腰椎棘突起の側面に置く。しっかりと筋肉を圧しながら第2胸椎棘突起の側面めがけて指を滑らせる。マッサージの開始地点を、順次第5腰椎から第1腰椎に移動しながら、同様の手技を繰り返す

 

 

 

 

 

 

短・長回旋筋(Rotatores m)と腰痛

 

 

 

短・長回旋筋と腰痛との関係
短・長回旋筋は胸椎の伸展、回旋、側屈に作用する。同筋の機能不全で胸椎の回旋運動が障害されると、本来回旋運動のない腰椎で代償性運動が生じ、腰痛の原因となる。

 

●起始 ─ 停止

起始

停止

胸椎横突起

短回旋筋は一つ上位の胸椎棘突起

長回旋筋は二つ上位の胸椎棘突起

 

●作用

両側:胸椎伸展

片側:胸椎の反対側回旋

 

●神経支配

胸神経の前枝と後枝

 

●回旋筋のストレッチ

【方法】

 

●回旋筋の筋力強化

【方法】

 

●回旋筋のマッサージ

【全体】

患者腹臥位。セラピストは患者の側面に立ち両母指を第12胸椎横突起に置く。一方の母指で横突起を固定したら、他方の母指は筋肉を圧しながら一つ上の棘突起へ指を滑らせる。指を滑らせたら先ほどの横突起へ戻って、今度は二つ上の棘突起へ指を滑らせる。この操作を全ての胸椎で行う。指を滑らせたときに胸椎を回旋させるように、棘突起の側面から圧を加えるとよい。

※回旋筋は最も深層に位置するため触知は無理であるが、体表から圧を加えれば介達的に他の筋より圧が伝えられ、少なくとも脊柱の骨性基盤からの刺激は与えられると思う

 

 

 

 

多裂筋(Multifidus m)と腰痛

 

 

 

●概要

回旋筋の上に付着する深層筋

棘突起の脇をなぞって行くと触知できるが、この筋肉を単独で触知することは困難

 

●多裂筋と腰痛との関係

1. L5-S1の側屈位変形では、多裂筋の仙骨・腰椎部の過緊張が関与していることがある

2. 腰椎後弯運動は多裂筋を含めた、腰部伸筋群のリラクゼーションにつながり、腰痛の軽減につながる

3. 第3腰椎肋骨突起の1〜2横指外側では筋硬結を触れることが多いが、その硬結は多裂筋によるものと考えられる。筋硬結部は通常圧痛閾値が高いが揉捻刺激により閾値は低下する。硬結は不明瞭かつ柔軟性のあるものでは、複数回の揉捻治療で消失することがあるが、境界明瞭で硬質なものは消失しがたい

筋肉はその長さが短いときには発揮できる力が弱くなる。腰椎過前弯位では腰部伸展筋である脊柱筋群の力が発揮できなくなり、腰椎の安定性が低下する


●起始 ─ 停止

起始

停止

仙骨後面及び全腰椎乳様突起及び副突起

胸椎横突起

隣接する2〜4椎骨上の棘突起

 

●作用

両側:脊柱の伸展

片側:脊柱を同側へ屈曲、反対側へ回旋

 

●神経支配

脊髄神経後枝

 

●多裂筋のストレッチ

1. ストレッチ側(右)を上にした側臥位(側臥位では脊柱周囲筋群の緊張を除去しやすい)

2. セラピストは患者前面から、患者の腋下を前腕で固定する

3. セラピストは一側の母指で棘突起を固定し、他方の手で固定棘突起から2〜4椎骨下の副突起方向に筋線維を伸張する

4. 多裂筋の起始と停止を遠ざけながら、体幹を右回旋させる(右回旋で右多裂筋が伸張する)

 

 

 

1. 患者座位で、腰部伸展位

2. セラピストは患者の背面左に座り母指で多裂筋を尾側・外側方向へ引く

3. 患者は多裂筋の起始と停止を引き離すように、体幹を屈曲・回旋させる

 

 

●多裂筋の筋力強化

【方法】

 

●多裂筋のマッサージ

【仙骨部】

患者腹臥位。セラピストは患者の側面に立ち母指を第5腰椎棘突起の側面に置く。しっかりと筋肉を圧したら、そのまま仙骨底部まで指を滑らせる

【全体】

患者腹臥位。セラピストは患者の側面に立ち母指を第5腰椎の棘突起と横突起の間へ置く。母指は椎弓に向かって床から45°斜めにする。筋肉を圧したら、そのままゆっくりと頚椎まで指を滑らせ、筋肉を縦断するようにマッサージを行う

【全体】

患者腹臥位。セラピストは患者の側面に立ち母指を腰椎の棘突起側面に置き、筋肉を圧しながら2椎骨下の横突起まで指を滑らせる。指を滑らせたら先ほどの棘突起に戻り、今度は3椎骨下の横突起、次いで4椎骨下の横突起と指を滑らせていく。この一通りの手順を全ての棘突起から行う。

 

●多裂筋のトリガーポイント

多裂筋に現れるトリガーポイント。×印の筋膜内に索状硬結が生じると、赤塗りの所に痛みが現れる。

この索状硬結を圧すると痛みが再現され、局所麻酔薬の注入で除痛される

 

 

半棘筋(Rotatores m)と腰痛

 

※胸半棘筋のみ記載(その他、頭・頸棘筋がある)

 

 

●概要

 

●半棘筋と腰痛との関係
胸半棘筋は胸椎の伸展、回旋、側屈に作用する。同筋の機能不全で胸椎の可動性が低下すると、腰椎での代償性過剰運動が生じ、腰痛の原因となる

 

●起始 ─ 停止

起始

停止

Th5〜11 横突起

C5〜7、Th1〜4 棘突起

 

●作用

両側:胸椎伸展

片側:胸椎の反対側回旋

 

●神経支配

胸神経の前枝と後枝

 

●ストレッチ

【方法】

 

●筋力強化

【方法】

 

●半棘筋のマッサージ

【方法】

患者腹臥位。セラピストは患者の側面に立ち母指を第11胸椎の棘突起と横突起の間に置く。しっかりと筋肉を圧したら、第1胸椎の棘突起と横突起の間まで指を滑らせる。半棘筋は横突起から起始し七つ上の棘突起へ停止する筋が順次並んでいるため、それら全ての筋を横切るように指を滑らせる

 

 

 

 

 

 

下後鋸筋(Serratus posterior inferior m)と腰痛

 

 

 

 

●概要

 

●下後鋸筋と腰痛との関係

1. 下後鋸筋の過緊張は胸郭横径拡張を制限させるが、体幹伸展で強制的に胸郭が拡張されると、下後鋸筋も強制的に伸張され痛みを伴う。腰背部に痛みを伴う伸展型腰痛には下後鋸筋が関与していることがある

2. 咳や最大呼気により痛みが増強する腰背部痛の原因では同筋が関与する事がある。コルセットでの胸郭運動の制限や、テーピング処置による筋線維の負担軽減などで、痛みが軽減することがある

3. 痛みは肋骨下部を現れ、執拗に続くことがあるが、脊柱の回旋や伸展で疼痛が軽減したという患者もいる

4. 下後鋸筋の筋起始腱膜は広背筋と共に、胸腰筋膜と癒合するが、この癒合部分は伸張性に乏しく腰痛が発生しやすいと言われている。同部位に疼痛を有する場合、筋線維の方向に沿って他動的伸張を行い、柔軟性を獲得していく

 

●起始 ─ 停止                        

起始

停止

T11,12および L1,2の棘突起

第9─第12肋骨

 

●下後鋸筋の作用

肋骨を内下方へと引く

呼気の補助

※中には、下後鋸筋は呼吸には関与せず、両側の収縮で脊椎伸展、片方の収縮で脊柱の同側回旋に作用するとの報告もある

 

●下後鋸筋の神経支配

肋間神経

 

●下後鋸筋のマッサージ

【方法】(右マッサージ)

患者腹臥位。セラピストは左に立ち、一方の手で左骨盤を固定する。他方の手の母指は第11-12胸椎棘突起の右側面に添える。筋肉に軽く圧を加えたら、そのまま第9-10肋骨停止部に向かって、上外方へ母指を滑らせる。これと同様の操作を第1-2腰椎棘突起から第11-12肋骨に走行する筋線維にも行う

注★肋骨の上を圧迫するので骨折に注意

 

 

 

胸腰筋膜と腰痛

 

 

 

●概要

表層

すべての腰部筋を覆うように外側を超えて付着

中層

内腹斜筋と腹横筋の起始部で縫線を形成

深層

脊柱起立筋の前表層に進み、最終的に腰椎横突起,横突靭帯に付着

筋収縮により胸腰筋膜の緊張が増強するため、屈曲・伸展の両方で脊椎の線維弾力性支持に関与する

特に脊柱起立筋の付着により、筋膜は側方へ伸張されて、強力な伸展要因となる

脊柱起立筋は35Kg以上の物を持ち上げる力を有していないが、それより重い物を持ち上げられるのは、靭帯や腹腔内圧の上昇他に、筋膜鞘内の区画内圧が関与していると考えられる

 

●胸腰筋膜と腰痛との関係

1. 胸腰筋膜が下後鋸筋や広背筋などと癒着すると癒合部分の伸張性が減弱し腰痛が発生しやすくなると言われている

2. 膜内に閉じ込められた筋肉の侵害受容器が、機械的刺激や血液遊出などで活性化し血管拡張を起こすと、筋線維内圧が上昇して痛みにつながる。冷刺激により疼痛が軽減する腰背部痛は、血管収縮による筋線維内圧の減少によるものという意見もある

3. 腰背部に存在する圧痛部で腰筋膜の切開を行うと、筋膜の緊張が緩和されて痛みが消失する

 

●胸腰筋膜のマッサージ

【方法】

患者腹臥位。セラピストは施術側に立ち、手掌全体を腰椎側面に置く。手掌全体で床方向へ圧を加えたら、1〜2cm手掌を頭側と尾側方向へ繰り返し揺り動かす。このとき手掌の直下にある皮膚や筋肉を同時に動かすような意識で行う。胸腰筋膜は仙骨から上位胸椎の高さまで膜を張っているため、手掌をずらしながら筋膜全体に順次行っていく

※胸腰筋膜の場合マッサージをすると言うより、周囲の筋肉と膜との滑走を改善させるように、筋と筋、筋と膜との層を横滑りさせるような感じで行う

 

 

 

 

胸腹境界


横隔膜(Diaphragm m)と腰痛

 

●概要

胸郭膜は腹腔と胸腔を隔てる筋肉で、肋骨部・胸骨部・腰椎部の三つの部分で構成されている

 

●横隔膜と腰痛の関係

横隔膜は腹壁の筋、骨盤底筋と強調して腹圧を高め、腰の負担を軽減させる。

詳しくは腹直筋の項を参照

 

●起始 ─ 停止

起始

停止

Th11-12、 L1-2の棘突起

中心腱

 

●作用

呼吸

腹圧負荷

 

●神経支配

頸神経叢の横隔神経(C3-C5)

 

●横隔膜の強化訓練

横隔膜が強化されると腹圧が高まり、腰部への負荷が軽減されることは知られている。以下は横隔膜を刺激する簡単な手技となる

種類

目的

方法

呼吸介助手技

 

呼気相に胸郭を圧迫する事により呼気ガス量の増大と圧迫された胸郭の弾力によって吸気量を増大させる

患者の呼気相に一致して下部胸郭を両側から手掌で圧迫する。

このとき無理な負荷がかからないように胸郭の生理的運動にあわせ聴診および胸郭の動きを手掌で触知しながら呼吸周期のタイミングをはかる

横隔膜刺激手技

 

横隔膜の運動を促進し肺底部の換気量を増大させる

患者の上腹部に片手の手掌を置き呼気にあわせて軽く圧迫し呼気から吸気へ移動するときに瞬間的に圧迫を加え横隔膜に反射的な運動を即す

スプリングアクション

 

胸郭が拡張する弾力を利用して大きな吸気量を得る

呼吸介助手技に準じ呼気にあわせて胸郭を圧迫し吸気に移行する直前に圧迫を一気に解除する

腹式呼吸

横隔膜を腹腔へ下げることで肺の容積を拡大させる

4秒くらいかけて、鼻から息を限界まで吸う(吸期時は腹部を膨隆させる)

吐く時は8秒くらいかけて息を吐く

 

 

次の方法も腹式呼吸訓練と同じである。自宅訓練として指導する時に分かりやすい

          自宅での横隔膜強化訓練

市販されている袋入りの塩や本など、少し重い物をお腹に乗せ

 

意識してお腹に置いた塩や本などを持ち上げるようにする

 

最初は500gから始めて、最終的に3kgくらいまで持ち上げられるようになればいい

 

 

 

 

骨盤底筋

 

 

骨盤底筋(Pelvic floor m)と腰痛

 

●概要

骨盤底筋は次の筋肉で構成される

骨盤底筋の概要図

骨盤底筋

骨盤隔膜

恥骨直腸筋

恥骨尾骨筋

腸骨尾骨筋

尿生殖隔膜

深会陰横筋

浅会陰横筋

括約筋

外位肛門括約筋

内位肛門括約筋

勃起筋

球海綿体筋

坐骨海綿体筋

 

●骨盤底筋と腰痛との関係

骨盤底筋は腹壁の筋、横隔膜と強調して腹圧を高め、腰の負担を軽減する。

詳しくは腹直筋の項を参照

 

●神経支配

仙骨神経叢の枝(S2-S4)

 

●骨盤底筋の強化訓練

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下肢筋群

 

大腿直筋(rectus femoris m)と腰痛

 

 

 

●概要

大腿直筋、内側広筋、外側広筋、中間広筋の4つの筋を大腿四頭筋という

股関節屈筋群(大腰筋、腸骨筋、縫工筋、大腿直筋、恥骨筋)の一つ

 

●大腿直筋と腰痛との関係

股関節屈筋群の緊張や短縮で骨盤が前捻すると、腰椎の過前弯が生じ腰痛の原因となる

股関節屈筋・伸筋・内外転筋などの筋肉が筋力低下をおこすと、それにより生じる重心バランスの安定性を得るために、より中枢の筋である腰部筋での代償が必要となり、疲労性の腰痛の原因となり得る。

大腿四頭筋の筋力低下では骨盤が後捻して腰椎が平坦する。一方で腰椎が過前弯になることもある。唯一の膝伸筋の筋力低下(L2-4神経根障害など)により、体が後方へ倒れるのを防ぐために大腿を前方へ移動させると重心は前方へ移動する。そのバランスをとるために腰椎は過伸展をする。

 

●起始 ─ 停止

起始

停止

寛骨の下前腸骨棘、臼蓋上縁

膝蓋靱帯となり、脛骨粗面につく。中に膝蓋骨で補強。

 

●作用

股関節の屈曲

膝関節の伸展

 

●神経支配

大腿神経(L2-4)

 

●大腿直筋の筋力強化

【一般的な方法】

大腿直筋は股関節屈曲や膝関節伸展の抵抗運動で強化できる。特に股関節伸展位の筋肉が伸張した状態で膝関節を伸展させると、より大きな力を発揮できる

自宅訓練では、下肢伸展挙上訓練を指導するとよい。内外旋中間位では直筋や中間広筋が鍛えられ、外旋位で行うと内側広筋が鍛えられる

【遅い逆運動(Slow-Reversal)】

筋力強化を目的として行う

拮抗筋(股関節伸筋群)の収縮を主動筋の収縮に先立って行わせ、主動筋の収縮を促通させる手技。

拮抗筋の等張性収縮から主動筋の等張性収縮を行わせる。

【遅い送運動保持(Slow-Reversal Hold)】

筋力強化、特に安定性の向上を目的として行う

拮抗筋の等張性収縮の次に等尺性収縮で筋収縮を促す。続いて主動筋の等張性収縮をおこない等尺性収縮を促す。

【リズム的安定化(Rhytmic Stabilization)】

等尺性収縮のみ用いた逆運動

拮抗筋の等尺性収縮から始め主動筋の等尺性収縮で終る

拮抗筋と主動筋の間で交互に等尺性収縮を行うことにより同時収縮が促通され安定性の向上が得られる。

 

大腿直筋のストレッチ

【方法】(右ストレッチ)

患者腹臥位で両下肢伸展位。セラピストは右膝関節をゆっくり曲げて、踵骨を殿部に近づけていく。患者が伸張感を感じたところで止めて持続伸張をする。

【注意】膝を曲げてさいに筋肉の抵抗を感じなくても、ストレッチを受ける側は強い伸張感を感じることがあるので、伸張されている感じがするところで声を掛けてもらうように伝えておく。

また、高齢者では変形性膝関節症を有する方も多いので、膝を曲げるときには気を付ける

 

●リラクゼーション

【保持リラックス(Hold-Relax)】

等尺性収縮を用いてリラクゼーションを得る手技

股関節を伸展していき可動域制限のある所で短縮した大腿直筋に等尺性収縮(股関節屈曲)をさせる。次いで力を抜くように指示し、リラクゼーションが得られたら自動運動で新たな可動域まで動かす。この手順を反復して可動域を改善する。

【収縮リラックス(Contract-Relax)】

保持リラックスと同様の手技だが、等尺性収縮でなく等張性収縮を用いる

PNFを利用した方法もある。PNFパターンを応用すると、股関節の屈曲─内転─外旋パターンの中で伸張させながら、最大収縮を行わせる

 

大腿直筋のマッサージ

【方法】

患者背臥位。セラピストは母指もしくは四指、手掌を膝蓋骨の直上に置く。筋肉を圧したら上前腸骨棘まで手を滑らせる。これと同様の操作を内・外側広筋でも行う

【方法】

患者背臥位。セラピストは母指を膝蓋骨直上の筋腱移行部に置く。筋線維母指で直圧したら、筋を横断するように左右に揉捻する。これと同様の操作を膝蓋靭帯でも行う

四頭筋の柔軟性低下を有している患者では、特にこの部の緊張が強くなっていることがあるため、重点的に行う

 

●前方回旋した骨盤の調整

【概要】

骨盤の前方回旋により生じた腰痛に行う。

股関節屈筋群の柔軟性改善および、屈曲拘縮の原因を除去した後に行うとよい

【方法】

患者腹臥位。セラピストは一方の手を腸骨稜へ置き、他方の手を上前腸骨棘へ添える。腸骨稜を下方へ押すと同時に、上前腸骨棘を引き上げる

【方法】

患者背臥位にて施術側の股・膝関節を屈曲位とする。セラピストは一方の手を上前腸骨棘へ、他方の手を腸骨稜へ置き、屈曲位とした下肢は、胸に添えておく。下肢を胸で押しながら最大屈曲位させると同時に、上前腸骨棘を頭側へ、腸骨稜を尾側へ引く。このとき患者には股関節伸展方向への運動をしてもらうと、ハムストリングスの収縮で骨盤の後傾運動が促される

 

大腿直筋の運動点(モーターポイント)

 

運動点とは運動神経の末梢がその支配する筋に進入する点あり、大腿直筋ではから大腿神経が侵入する。内側広筋は。外側広筋は

運動点での圧痛はより近位の病巣を表すといわれている。大腿神経障害好発部位はL2-L4の椎間孔・脊柱管病変腸腰筋内(血腫等)、股関節前面(過伸展損傷)などがある

運動点への経皮的電気刺激は、わずかな刺激量で筋の著明収縮が得られるため、廃用性萎縮の予防に利用できる。

 

 

●大腿四頭筋のトリガーポイント

大腿四頭筋に現れるトリガーポイント。×印の筋膜内に索状硬結が生じると、赤塗りの所に痛みが現れる。

この索状硬結を圧すると痛みが再現され、局所麻酔薬の注入で除痛される


縫工筋(sartorius m)と腰痛

 

 

 

●概要

上前腸骨棘に起始する縫工筋の収縮で骨盤が前捻する

あぐら肢位をとるさいの筋肉であるが、股関節の屈曲もしくは膝関節の屈曲単独の方が働きは強い

脛骨粗面内側部で鵞足となる

 

●縫工筋と腰痛との関係

股関節屈筋群(縫工筋を含む)の緊張や短縮で骨盤が前捻すると、腰椎の過前弯が生じ腰痛の原因となる

 

●起始 ─ 停止

起始

停止

上前腸骨棘

脛骨粗面・内側

 

●作用

股関節の屈曲・外転・外旋

膝関節の屈曲・内旋

●神経支配

大腿神経(L2-L3)

 

●縫工筋の筋力強化

【一般的な方法】

膝伸展位で、縫工筋は股関節の屈筋として有効に働くので、腸腰筋のための筋力訓練でも鍛えられる

【遅い逆運動、遅い送運動保持、リズム的安定化】

この手技の方法は大腿直筋を参照

 

縫工筋のストレッチ

【方法】(右ストレッチ)

患者背臥位で右下肢をベッドの端から出し、左下肢を骨盤後捻の防止のために胸の前で抱きかかえてもらう。セラピストは患者の右膝を90°屈曲位にして股関節を伸展・内旋させる。伸張感を感じたところで止めて持続伸張をする。

 

 

●リラクゼーション

【保持リラックス(Hold-Relax)、収縮リラックス(Contract-Relax)】

手技の方法は大腿直筋を参照

 

縫工筋のマッサージ

【方法】

患者背臥位。セラピストは母指もしくは四指を内側関節裂隙の上に置く。筋肉を圧したら、そのまま圧を加えながら上前腸骨棘まで指を滑らせる。

 

●前方回旋した骨盤の調整

※大腿直筋を参照

 

縫工筋の運動点(モーターポイント)

 

運動点とは運動神経の末梢がその支配する筋に進入する点あり、縫工筋では図の位置で大腿神経が侵入する。

運動点での圧痛はより近位の病巣を表すといわれている。大腿神経障害好発部位はL2-L3の椎間孔・脊柱管病変腸腰筋内(血腫等)、股関節前面(過伸展損傷)などがある

運動点への経皮的電気刺激は、わずかな刺激量で筋の著明収縮が得られるため、廃用性萎縮の予防に利用できる。

 

 

縫工筋のトリガーポイント

縫工筋に現れるトリガーポイント。×印の筋膜内に索状硬結が生じると、赤塗りの所に痛みが現れる。

この索状硬結を圧すると痛みが再現され、局所麻酔薬の注入で除痛される

 

 

 

恥骨筋(pectineus m)と腰痛

 

 

 

●概要

内転筋には恥骨筋、薄筋、長内転筋、短内転筋、大内転筋などがあり、それらをまとめて内転筋群と呼ぶ。浅層には恥骨筋・長内転筋・薄筋、深層には短内転筋、大内転筋がある

 

●恥骨筋と腰痛との関係

股関節屈筋群(恥骨筋を含む)の緊張や短縮で骨盤が前捻すると、腰椎の過前弯が生じ腰痛の原因となる

股関節内転筋(恥骨筋を含む)の一側の緊張や短縮は、同側の骨盤を挙上させる。骨盤の高さの非対称性は腰部筋群のストレスにつながる

 

●起始 ─ 停止

起始

停止

恥骨櫛

大腿骨・近位(前上面)

 

●作用

股関節の内転・外旋(屈曲)

 

●神経支配

大腿神経(L2-L3)

閉鎖神経 - 前枝(L2-L3)

 

●恥骨筋の筋力強化

【一般的な方法】

恥骨筋の強化は腸腰筋と同様の運動、つまり立位で大腿を上げる運動で鍛えられる。最初は膝を曲げて行い、筋力の増加に伴って膝を伸ばして行うと負荷がかかる。運動時に内転を加えれば、より効果がある

【遅い逆運動】

筋力強化を目的として行う

拮抗筋(外転筋群)の収縮を主動筋(恥骨筋)の収縮に先立って行わせ、主動筋の収縮を促通させる手技。拮抗筋の等張性収縮から主動筋の等張性収縮を行わせる。

【遅い送運動保持】

筋力強化、特に安定性の向上を目的として行う

拮抗筋の等張性収縮の次に等尺性収縮で筋収縮を促す。続いて主動筋の等張性収縮をおこない等尺性収縮を促す。

【リズム的安定化】

等尺性収縮のみ用いた逆運動

拮抗筋の等尺性収縮から始め主動筋の等尺性収縮で終る

拮抗筋と主動筋の間で交互に等尺性収縮を行うことにより同時収縮が促通され安定性の向上が得られる。

 

恥骨筋のストレッチ

【方法】(右ストレッチ)

患者背臥位で右下肢をベッドの端から出して股関節外転・伸展位とする。左下肢を骨盤後捻の防止のために胸の前で抱きかかえてもらう。セラピストは患者の右膝を90°屈曲位にして股関節を内旋させていく。伸張感を感じたところで止めて持続伸張をする。

 

●リラクゼーション

【保持リラックス】

等尺性収縮を用いてリラクゼーションを得る手技

股関節を外転していき可動域制限のある所で短縮した恥骨筋に等尺性収縮(股関節内転)をさせる。次いで力を抜くように指示し、リラクゼーションが得られたら自動運動で新たな可動域まで動かす。この手順を反復して可動域を改善する。

【収縮リラックス】

保持リラックスと同様の手技だが、等尺性収縮でなく等張性収縮を用いる

PNFを利用した方法もある。PNFパターンを応用すると、股関節の屈曲─内転─外旋パターンの中で伸張させながら、最大収縮を行わせる

 

恥骨筋の運動点(モーターポイント)

 

運動点とは運動神経の末梢がその支配する筋に進入する点あり、恥骨筋では図の位置で大腿神経が侵入する。

 

運動点での圧痛はより近位の病巣を表すといわれている。大腿神経障害好発部位はL2-L3の椎間孔・脊柱管病変腸腰筋内(血腫等)、股関節前面(過伸展損傷)などがある

 

運動点への経皮的電気刺激は、わずかな刺激量で筋の著明収縮が得られるため、廃用性萎縮の予防に利用できる。

 

 

●恥骨筋のトリガーポイント

恥骨筋に現れるトリガーポイント。×印の筋膜内に索状硬結が生じると、赤塗りの所に痛みが現れる。

この索状硬結を圧すると痛みが再現され、局所麻酔薬の注入で除痛される

 

 

大腿筋膜張筋(tensor fasciae latae m)と腰痛

 

 

 

●概要

上前腸骨棘に起始するため、筋肉の収縮で骨盤が前捻する

大腿筋膜張筋は股関節屈曲位の時に、股関節が外旋するのを防いでいる

歩行やランニング中に、下肢が外旋位になることを防ぐ役割を果たしている

 

●大腿筋膜張筋と腰痛との関係

股関節外転筋である大腿筋膜張筋や中殿筋の筋活動の低下は、立位時の前額面の重心動揺を増大させる。代償として脊柱起立筋の活動が増大すると腰痛の原因となる。大腿筋膜張筋の筋力強化で、この代償的な脊柱起立筋活動を軽減させることは腰痛の予防につながる

腰神経背側枝は椎間関節、椎間靭帯、背部の筋群などを支配しており、刺激によって、ハムストリングスのほか中殿筋や大腿筋膜張筋に筋スパズムを引き起こすことが確認されている

 

●起始 ─ 停止

起始

停止

上前腸骨棘

中殿筋膜

腸脛靭帯(脛骨粗面につく)

 

●作用

股関節の屈曲・外転・(内旋)

膝関節の伸展

 

●神経支配

上殿神経(L4-S1)

 

●大腿筋膜張筋の筋力強化

【一般的な方法】

背臥位、下肢内旋位での挙上運動で強化できる

側臥位、下肢伸展位での股関節外転運動でも強化可能

【遅い逆運動】

拮抗筋(股関節伸展・内転)の収縮を主動筋の収縮に先立って行わせ、主動筋の収縮を促通させる手技。

拮抗筋の等張性収縮から主動筋の等張性収縮を行わせる。

【遅い送運動保持】

筋力強化、特に安定性の向上を目的として行う

拮抗筋の等張性収縮の次に等尺性収縮で筋収縮を促す。続いて主動筋の等張性収縮をおこない等尺性収縮を促す。

【リズム的安定化】

等尺性収縮のみ用いた逆運動

拮抗筋の等尺性収縮から始め主動筋の等尺性収縮で終る

拮抗筋と主動筋の間で交互に等尺性収縮を行うことにより同時収縮が促通され安定性の向上が得られる。

 

大腿筋膜張筋のストレッチ

【方法】(右ストレッチ)

患者背臥位。左股・膝関節を屈曲位として、右下肢の上を交差させて対側に足を置く。右下肢を内転させて筋肉を伸長する。伸張感を感じたところで止めて持続伸張をする。

 

 

●リラクゼーション

【保持リラックス】

等尺性収縮を用いてリラクゼーションを得る手技

股関節を伸展・内転していき可動域制限のある所で短縮筋に等尺性収縮(股関節の屈曲・外転)をさせる。次いで力を抜くように指示し、リラクゼーションが得られたら自動運動で新たな可動域まで動かす。この手順を反復して可動域を改善する。

【収縮リラックス】

保持リラックスと同様の手技だが、等尺性収縮でなく等張性収縮を用いる

PNFを利用した方法もある。PNFパターンを応用すると、股関節の屈曲─外転─内旋パターンの中で大腿筋膜張筋を伸張させながら、最大収縮を行わせる

 

大腿筋膜張筋のマッサージ

【方法】

患者背臥位。セラピストは四指を大腿筋膜張筋の上、腸骨稜と大転子の間に置く。筋肉を圧したらその場で揉捻を加える

【方法】(腸脛靭帯)

患者側臥位。股・膝関節を屈曲位とする。手掌を大転子の直上に置く。直圧を加えたら脛骨外側顆まで手を滑らせる

 

大腿筋膜張筋の運動点(モーターポイント)

 

運動点とは運動神経の末梢がその支配する筋に進入する点あり、大腿筋膜張筋では図の位置で上殿神経が侵入する。

運動点での圧痛はより近位の病巣を表すといわれている。障害好発部位としては、L4-S1の椎間孔・脊柱管、梨状筋上孔などがある

運動点への経皮的電気刺激は、わずかな刺激量で筋の著明収縮が得られるため、廃用性萎縮の予防に利用できる。

 

 

●大腿筋膜張筋のトリガーポイント

大腿筋膜張筋に現れるトリガーポイント。×印の筋膜内に索状硬結が生じると、赤塗りの所に痛みが現れる。

この索状硬結を圧すると痛みが再現され、局所麻酔薬の注入で除痛される

 

 

 

大殿筋 (gluteus maximus m)と腰痛

 

 

 

●概要

骨盤後面の広範囲にわたって触れることが出来る筋肉

股関節の伸展に作用するが、特に10°以上の伸展から働く。そのため通常の歩行で鍛えることは難しい

 

●大殿筋と腰痛との関係

1. 股関節伸筋群(大殿筋を含む)が緊張や短縮をすると、骨盤は後傾して腰椎の前弯を弱くする。しかし同時に腸腰筋の緊張も高いと、骨盤の後傾による股関節の伸展で、小結節に付着する腸腰筋が牽引され、骨盤後傾・腰椎過前弯の逆転減少が生じる。いわゆる円背姿勢である

2. 股関節伸筋群が弛緩すると、骨盤は前傾して腰椎前弯を強くする

3. 大殿筋が障害されると、座位から能動的な立ち上がりが困難となる。立ち上がり時に骨盤でなく腰を優位に上体を起こすと、腰への負荷が増大する。立位時の腰痛では股関節伸展運動が正しく行われているかを確認する。

4. 大殿筋は股関節伸展10°以上から活動が強まるため、股関節屈曲拘縮があると筋萎縮が進み矢状面での安定性が低下する。矢状面での安定性は腰部で代用され疲労性の腰痛の原因となる

5. 立位にて身体が前方へ触れる運動(歩行や前方のものをとる動作など)では、ハムストリングス、下腿三頭筋、脊柱起立筋、殿筋などの身体後面の筋活動が高まる。つまり下肢後面筋群の活動が弱ければ、脊柱起立筋へは過剰負荷がかかり腰痛の原因となる

 

 

●起始 ─ 停止

起始

停止

後殿筋線の後部腰背筋膜

仙骨尾骨外側仙結節靭帯

上部線維:腸脛靭帯

下部線維:殿筋粗面

 

●作用

股関節全体 : 伸展・(外旋)

上部線維  : 外転

下部線維  : 内転

 

●神経支配

下殿神経 (L5-S2)

 

●大殿筋の筋力強化

【一般的な方法】

腹臥位で膝を屈曲させた状態で、股関節を伸展させると鍛えられる

ブリッジ動作では膝関節を30°以上曲げて、ハムストリングの活動を抑えると大殿筋が鍛えられる

【遅い逆運動】

拮抗筋(大腿四頭筋)の収縮を主動筋の収縮に先立って行わせ、主動筋の収縮を促通させる手技。

拮抗筋の等張性収縮から主動筋の等張性収縮を行わせる。

【遅い送運動保持】

筋力強化、特に安定性の向上を目的として行う

拮抗筋の等張性収縮の次に等尺性収縮で筋収縮を促す。続いて主動筋の等張性収縮をおこない等尺性収縮を促す。

【リズム的安定化】

等尺性収縮のみ用いた逆運動

拮抗筋の等尺性収縮から始め主動筋の等尺性収縮で終る

拮抗筋と主動筋の間で交互に等尺性収縮を行うことにより同時収縮が促通され安定性の向上が得られる。

 

大殿筋のストレッチ

【方法】(右ストレッチ)

患者背臥位で両下肢伸展位。セラピストは左下肢を一方の手で固定し、他方の手で右膝関節を持ち上げて股関節を最大屈曲させる。伸張感を感じたところで止めて持続伸張をする。

 

【方法】

患者腹臥位。セラピストは一方の手を腰部に、他方の手を先の手を交差させて腸骨稜に置く。両手を対側方向へ押しながら、腸骨稜に置いた手は殿部の筋線維に沿って滑らせる。

 

●リラクゼーション

【保持リラックス】

等尺性収縮を用いてリラクゼーションを得る手技

膝伸展で股屈曲をしていき可動域制限のある所で短縮筋に等尺性収縮(下肢外旋位で膝関節屈曲 )をさせる。次いで力を抜くように指示し、リラクゼーションが得られたら自動運動で新たな可動域まで動かす。この手順を反復して可動域を改善する。

【収縮リラックス】

保持リラックスと同様の手技だが、等尺性収縮でなく等張性収縮を用いる

PNFを利用した方法もある。PNFパターンを応用すると、股関節の伸展─外転─内旋パターンの中で大腿二頭筋を伸張させながら、最大収縮を行わせる

内側ハムでは股関節の伸展─内転─外旋パターンの中で伸張させながら、最大収縮を行わせる

 

大殿筋のマッサージ

【方法】

患者背臥位。セラピストは手掌を尾側方向へ向けて殿部の上に置く。手根部で組織を圧したら、そのまま筋肉の走行に沿って手掌で揉捻する。大殿筋の腸脛靭帯付着部や、小・中殿筋の付着部まで全てに順次圧を加える。

【方法】

患者側臥位、股・膝関節軽度屈曲位。セラピストは母指を殿部外側、腸骨稜に置く。筋肉を圧したら大転子に向かって母指を滑らせる。この操作を腸骨稜の開始地点を少しずつずらしながら、繰り返し行う。

 

大殿筋の運動点(モーターポイント)

 

運動点とは運動神経の末梢がその支配する筋に進入する点あり、大殿筋では図の位置で下殿神経が侵入する。

運動点での圧痛はより近位の病巣を表すといわれている。障害好発部位としては、L5-S2の椎間孔・脊柱管病変、梨状筋下孔などがある

運動点への経皮的電気刺激は、わずかな刺激量で筋の著明収縮が得られるため、廃用性萎縮の予防に利用できる。

 

 

●大殿筋のトリガーポイント

大殿筋に現れるトリガーポイント。×印の筋膜内に索状硬結が生じると、赤塗りの所に痛みが現れる。

この索状硬結を圧すると痛みが再現され、局所麻酔薬の注入で除痛される

 

 

 

大腿二頭筋(biceps femoris m)と腰痛

 

 

 

●概要

大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋が合してハムストリングスとなる。ハムストリングの働きは、膝関節の屈曲と股関節の伸展であるが、大腿二頭筋はハムストリングの外側を構成しているため、その作用は股関節伸展・外旋と膝関節の屈曲・外旋

 

●大腿二頭筋と腰痛との関係

1. ハムストリングの緊張や短縮で骨盤の自由度が制限されると、日常生活での腰部のストレスが増大する。特に体幹前屈運動における腰椎の過剰運動が指摘されている

2. ハムストリングスの一側の緊張は、骨盤を後捻させる。この左右の骨盤の非対称性は腰部への負担は増大させる

3. 一側のハムストリングの緊張では、前屈時に骨盤の高位差を生じさせる

4. 腰部の伸筋力検査や筋力訓練時を立位や座位で行う際は、純粋に背筋だけでなく力の強い殿筋やハムストリングも関与することがあるため注意

5. ハムストリングなどが原因で膝関節に屈曲拘縮を生じれば、股関節にも同様に拘縮が生じ、骨盤の高位さに直結する

6. ハムストリングを含めた股関節伸筋群の筋力低下は骨盤前捻を生じさせ、腰椎過前弯の原因となる

7. 腰神経背側枝は椎間関節、椎間靭帯、背部の筋群などを支配しており、刺激によって、ハムストリングスのほか中殿筋や大腿筋膜張筋に筋スパズムを引き起こすことが確認されている

8. ハムストリングの短縮で股関節が伸展すると、小結節に停止する腸腰筋が牽引され腰椎の過前弯を生じることがある。ハイヒールで腰椎過前弯が生じるのもこれと同じ仕組みである

9. ハムストリングは矢状面内での骨盤安定に関与しているため、筋肉の機能低下で腰椎への負担が増加する

10. 内容は9と同じだが、立位にて身体が前方へ触れる運動(歩行や前方のものをとる動作など)では、ハムストリングス、下腿三頭筋、脊柱起立筋、殿筋などの身体後面の筋活動が高まる。つまり下肢後面筋群の活動が弱ければ、脊柱起立筋へは過剰負荷がかかり腰痛の原因となる

 

●起始 ─ 停止

起始

停止

長頭:坐骨結節

短頭:大腿骨・後下面 

腓骨頭

 

●作用

股関節の伸展

膝関節の屈曲・外旋 

 

●神経支配

坐骨神経(脛骨神経)(L5-S2)長頭

坐骨神経(総腓骨神経)(S1-S2)短頭

※大腿二頭筋は坐骨神経から直接筋枝が出るが、その神経は長頭が脛骨神経、短頭が総腓骨神経由来のものである

 

●大腿二頭筋の筋力強化

【一般的な方法】

腹臥位で膝関節の抵抗屈曲運動で強化できる

立位では足首に重錘を付けて膝を曲げる運動を行う

【遅い逆運動、遅い送運動保持、リズム的安定化】

大殿筋を参照

 

大腿二頭筋のストレッチ

【方法】(右ストレッチ)

患者背臥位で両下肢伸展位。セラピスト一方の手で右下腿遠位を保持し、他方の手を膝関節前面に添える。右股関節を外旋位で屈曲させていく。伸張感を感じたところで止めて持続伸張をする。

 

 

●リラクゼーション

【保持リラックス、収縮リラックス】

大殿筋を参照

 

●大腿二頭筋マッサージ

【方法】

患者腹臥位。セラピストは四指を膝窩外側に置く。筋肉を圧しながら坐骨結節に向かって指を滑らせる。同様の操作を膝窩中央からも行う。

※筋肉の厚い場合は肘で行うが、膝窩部の神経や血管には注意する

 

大腿二頭筋の運動点(モーターポイント)

 

運動点とは運動神経の末梢がその支配する筋に進入する点あり、大腿二頭筋長頭ではで、大腿二頭筋短頭ではで坐骨神経が侵入する。

運動点での圧痛はより近位の病巣を表すといわれている。障害好発部位としては、L5-S2の椎間孔・脊柱管病変、梨状筋下孔などがある

運動点への経皮的電気刺激は、わずかな刺激量で筋の著明収縮が得られるため、廃用性萎縮の予防に利用できる。

 

 

●大腿二頭筋のトリガーポイント

大腿二頭筋に現れるトリガーポイント。×印の筋膜内に索状硬結が生じると、赤塗りの所に痛みが現れる。

この索状硬結を圧すると痛みが再現され、局所麻酔薬の注入で除痛される

 

 

 

半腱様筋(semitendinosus m)と腰痛

 

 

 

●概要

半腱様筋、半膜様筋、大腿二頭筋が合してハムストリングスとなる。ハムストリングの働きは、膝関節の屈曲と股関節の伸展であるが、半腱様筋はハムストリングの内側を構成しているため、その作用は股関節伸展・内旋と膝関節屈曲・内旋

 

●半腱様筋と腰痛との関係

大腿二頭筋を参照

 

●起始 ─ 停止

起始

停止

坐骨結節

脛骨粗面 

 

●作用

股関節の伸展・内旋

膝関節の屈曲・内旋

 

●神経支配

坐骨神経(脛骨神経)(L4-S2)

※半腱様筋は坐骨神経から直接筋枝が出るが、その神経は脛骨神経由来のものである

 

半腱様筋の筋力強化

【一般的な方法】

腹臥位で膝関節の抵抗屈曲運動で強化できる

立位では足首に重錘を付けて膝を曲げる運動を行う

【遅い逆運動】

拮抗筋(大腿四頭筋)の収縮を主動筋の収縮に先立って行わせ、主動筋の収縮を促通させる手技。

拮抗筋の等張性収縮から主動筋の等張性収縮を行わせる。

【遅い送運動保持】

筋力強化、特に安定性の向上を目的として行う

拮抗筋の等張性収縮の次に等尺性収縮で筋収縮を促す。続いて主動筋の等張性収縮をおこない等尺性収縮を促す。

【リズム的安定化】

等尺性収縮のみ用いた逆運動

拮抗筋の等尺性収縮から始め主動筋の等尺性収縮で終る

拮抗筋と主動筋の間で交互に等尺性収縮を行うことにより同時収縮が促通され安定性の向上が得られる。

 

●半腱様筋のストレッチ

【方法】(右ストレッチ)

患者背臥位で両下肢伸展位。セラピスト一方の手で右下腿遠位を保持し、他方の手を膝関節前面に添える。右股関節を内旋位で屈曲させていく。伸張感を感じたところで止めて持続伸張をする。

 

 

●リラクゼーション

【保持リラックス】

等尺性収縮を用いてリラクゼーションを得る手技

膝伸展で股屈曲をしていき可動域制限のある所で短縮筋に等尺性収縮(下肢内旋位で膝関節屈曲 )をさせる。次いで力を抜くように指示し、リラクゼーションが得られたら自動運動で新たな可動域まで動かす。この手順を反復して可動域を改善する。

【収縮リラックス】

保持リラックスと同様の手技だが、等尺性収縮でなく等張性収縮を用いる

PNFを利用した方法もある。PNFパターンを応用すると、股関節の伸展─内転─外旋パターンの中で伸張させながら、最大収縮を行わせる

 

●半腱様筋マッサージ

【方法】

患者腹臥位。セラピストは四指を膝窩内側に置く。筋肉を圧しながら坐骨結節に向かって指を滑らせる。同様の操作を膝窩中央からも行う。

※筋肉の厚い場合は肘で行うが、膝窩部の神経や血管には注意する

 

●半腱様筋の運動点(モーターポイント)

 

運動点とは運動神経の末梢がその支配する筋に進入する点あり、半腱様筋では図の位置で坐骨神経が侵入する。

運動点での圧痛はより近位の病巣を表すといわれている。障害好発部位としては、L4-S2の椎間孔・脊柱管病変、梨状筋下孔などがある

運動点への経皮的電気刺激は、わずかな刺激量で筋の著明収縮が得られるため、廃用性萎縮の予防に利用できる。

 

 

●半腱様筋のトリガーポイント

大腿二頭筋を参照

 

 

半膜様筋 (semimembranosus m)と腰痛

 

 

 

●概要

半膜様筋、半腱様筋、大腿二頭筋が合してハムストリングスとなる。ハムストリングの働きは、膝関節の屈曲と股関節の伸展であるが、半腱様筋はハムストリングの内側を構成しているため、その作用は股関節伸展・内旋と膝関節屈曲・内旋

脛骨粗面では鵞足を形成する

 

●半膜様筋と腰痛との関係

大腿二頭筋を参照

 

●起始 ─ 停止

起始

停止

坐骨結節 

脛骨内側顆、膝窩靱帯 下腿筋膜

 

●作用

股関節の伸展・内旋

膝関節の屈曲・内旋

 

●神経支配

坐骨神経(脛骨神経)(L4-S2)

※半膜様筋は坐骨神経から直接筋枝が出るが、その神経は脛骨神経由来のものである

 

●半膜様筋の筋力強化

●ストレッチ

●リラクゼーション

●マッサージ

半腱様筋を参照

 

半膜様筋の運動点(モーターポイント)

 

運動点とは運動神経の末梢がその支配する筋に進入する点あり、半膜様筋では図の位置で坐骨神経が侵入する。

運動点での圧痛はより近位の病巣を表すといわれている。障害好発部位としては、L4-S2の椎間孔・脊柱管病変、梨状筋下孔などがある

運動点への経皮的電気刺激は、わずかな刺激量で筋の著明収縮が得られるため、廃用性萎縮の予防に利用できる。

 

 

●半膜様筋のトリガーポイント

大腿二頭筋を参照

 

中殿筋 (gluteus medius m)と腰痛

 

 

 

●概要

中・小殿筋は歩行中に働く。

中・小殿筋が機能低下を起こすと、歩行中に健側の骨盤が下がるトレンデレンブルグ歩行が現れる

 

中殿筋と腰痛との関係

1. 中殿筋の腸骨付着部は、大殿筋など他の筋肉に覆われることがなく、筋肉そのものも薄い。体表からの刺激は骨性基盤の腸骨翼に伝わり、上殿神経や上殿皮神経を圧迫させる。上殿皮神経の炎症は腸骨稜部の痛みとして現れる

2. 大腿筋膜張筋や中殿筋の筋活動の低下は立位時の前額面の重心動揺を増大させる。代償として脊柱起立筋活動が増大すると腰痛の原因となる。中殿筋の筋力強化で、この代償的な脊柱起立筋活動を軽減させることは腰痛の予防につながる

3. 腰神経後枝は椎間関節、椎間靭帯、背部の筋群などを支配しており、刺激によってハムストリングスのほか中殿筋や大腿筋膜張筋に筋スパズムを引き起こすことが確認されている

4. 股関節外転筋(中殿筋を含む)の一側の緊張や短縮は、同側の骨盤を下制させる。骨盤の高さの非対称性は腰部筋群のストレスにつながる

5. 股関節外転筋(中殿筋を含む)の弱化は、股関節への負荷を増加させて変形性変化を生じさせる。股関節の変形性変化により仙腸関節や腰椎に負荷がかかる

6. 立位にて身体が前方へ触れる運動(歩行や前方のものをとる動作など)では、ハムストリングス、下腿三頭筋、脊柱起立筋、殿筋などの身体後面の筋活動が高まる。つまり下肢後面筋群の活動が弱ければ、脊柱起立筋へは過剰負荷がかかり腰痛の原因となる

 

●起始 ─ 停止

起始

停止

腸骨後面 

大腿骨の大転子外側

 

●作用

股関節の外転

 

●神経支配

上殿神経(L4-S1)

 

●中殿筋の筋力強化

【一般的な方法】

側臥位、下肢伸展位での股関節外転運動で鍛えられる

サイドステップなどの体重が左右交互に移動する運動でも鍛えられる

【遅い逆運動】

拮抗筋(内転筋群)の収縮を主動筋(中殿筋)の収縮に先立って行わせ、主動筋の収縮を促通させる手技。

拮抗筋の等張性収縮から主動筋の等張性収縮を行わせる。

【遅い送運動保持】

筋力強化、特に安定性の向上を目的として行う

拮抗筋の等張性収縮の次に等尺性収縮で筋収縮を促す。続いて主動筋の等張性収縮をおこない等尺性収縮を促す。

【リズム的安定化】

等尺性収縮のみ用いた逆運動

拮抗筋の等尺性収縮から始め主動筋の等尺性収縮で終る

拮抗筋と主動筋の間で交互に等尺性収縮を行うことにより同時収縮が促通され安定性の向上が得られる。

 

中殿筋のストレッチ

【方法】(右ストレッチ)

患者背臥位で両下肢伸展位。セラピストは左下肢を一方の手で固定し、他方の手で右膝関節を持ち上げて股関節を屈曲・最大内転させる。伸張感を感じたところで止めて持続伸張をする。

 

 

●リラクゼーション

【保持リラックス】

等尺性収縮を用いてリラクゼーションを得る手技

股関節を内転していき可動域制限のある所で短縮した中殿筋に等尺性収縮(股関節外転 )をさせる。次いで力を抜くように指示し、リラクゼーションが得られたら自動運動で新たな可動域まで動かす。この手順を反復して可動域を改善する。

【収縮リラックス】

保持リラックスと同様の手技だが、等尺性収縮でなく等張性収縮を用いる

PNFを利用した方法もある。PNFパターンを応用すると、股関節の伸展─外転─内旋パターンの中で伸張させながら、最大収縮を行わせる

 

中殿筋のマッサージ

※大殿筋のマッサージを参照

 

中殿筋の運動点(モーターポイント)

 

運動点とは運動神経の末梢がその支配する筋に進入する点あり、中殿筋では図の位置で上殿神経が侵入する。

運動点での圧痛はより近位の病巣を表すといわれている。障害好発部位としては、L4-S1の椎間孔・脊柱管病変、梨状筋上孔などがある

運動点への経皮的電気刺激は、わずかな刺激量で筋の著明収縮が得られるため、廃用性萎縮の予防に利用できる。

 

 

 

●中殿筋のトリガーポイント

中殿筋に現れるトリガーポイント。×印の筋膜内に索状硬結が生じると、赤塗りの所に痛みが現れる。

この索状硬結を圧すると痛みが再現され、局所麻酔薬の注入で除痛される

 

 

 

小殿筋(gluteus minimus m)と腰痛

 

 

 

●概要

中・小殿筋は歩行中に働く。

中・小殿筋が機能低下を起こすと、歩行中に健側の骨盤が下がるトレンデレンブルグ歩行が現れる

 

●小殿筋と腰痛との関係

股関節外転筋(小殿筋を含む)の一側の緊張や短縮は、同側の骨盤を下制させる。骨盤の高さの非対称性は腰部筋群のストレスにつながる

股関節外転筋の一側の機能低下は、反対側の骨盤を下制させる。骨盤の高さの非対称性が腰痛の原因となる。

 

●起始 ─ 停止

起始

停止

腸骨後面 

大腿骨の大転子前面

 

●作用

股関節の外転・(内旋) 

●神経支配

上殿神経(L4-S1)

 

●小殿筋の筋力強化

●ストレッチ

●リラクゼーション

中殿を参照

 

●小殿筋のマッサージ

大殿筋を参照

 

小殿筋の運動点(モーターポイント)

 

小殿筋のトリガーポイント

小殿筋に現れるトリガーポイント。×印の筋膜内に索状硬結が生じると、赤塗りの所に痛みが現れる。

この索状硬結を圧すると痛みが再現され、局所麻酔薬の注入で除痛される

 

 

 

 

梨状筋(piriformis m)と腰痛

 

 

 

●概要

仙骨から殿部に走行する筋肉

梨状筋上孔より、上殿神経と上殿動・静脈が出て中殿筋に分布する

梨状筋下孔より、坐骨神経が出て下肢へ向かう

 

●梨状筋と腰痛との関係

梨状筋部で坐骨神経が障害を受けると下肢症状が現れるため、脊柱疾患との鑑別に注意する。この部の障害は梨状筋症候群と呼ばれる。

梨状筋上孔から出る上殿神経が絞扼されて、中・小殿筋、大腿筋膜張筋が障害を受けると、トレンデレンブルグ歩行が現れる。上殿神経は筋枝であるため知覚が障害されることはないが、支配筋の弱化による易疲労性の鈍痛を殿部に感じることがあるかもしれない

梨状筋下孔からは坐骨神経が現れる。坐骨神経の筋枝が障害を受けると、膝関節屈筋群や足関節伸筋群・屈筋群に影響が出る。皮枝の障害では下肢前面部では下腿外側、足背に、下肢後面部では大腿、下腿外側、足底に障害が現れる。障害の程度にもよるが、痛みは大殿や大腿後面で止まり膝下までは放散しないことが多い

 

●梨状筋症候群について

梨状筋の下方で坐骨神経が障害されて下肢痛を生じたものを梨状筋症候群という

同一姿勢や座位(特に横座り)で悪化

梨状筋および、坐骨神経出口に圧痛

股関節屈曲・内転・内旋位で梨状筋が緊張すると坐骨神経症状が誘発される(Freiberg試験)

原因は梨状筋の形態異常、炎症、筋攣縮などがある

 

●起始 ─ 停止

起始

停止

仙骨骨盤面

大転子先端

 

●作用

股関節の外旋

 

●神経支配

仙骨神経叢(S1-S2)

●保存療法

筋緊張が原因であれば、温熱療法やストレッチ、マッサージなどで柔軟性を獲得する

温熱療法:ホットパックや超短波

ストレッチ:股関節屈曲・内転・内旋をゆっくり行う。症状が誘発されないように注意

マッサージ:大転子先端を確認し、そこから仙腸関節に向かって梨状筋線維を揉捻する。坐骨神経出口の刺激で神経症状が誘発される場合は、起始・停止の付着部を優先して揉捻する

 

●梨状筋の筋力強化

【一般的な方法】

側臥位、下肢伸展位での股関節外旋運動で鍛えられる。足関節90°の両前足部にゴムチューブをかけて股関節外旋運動を行うとよい。

【遅い逆運動】

拮抗筋(内旋筋群)の収縮を主動筋(梨状筋)の収縮に先立って行わせ、主動筋の収縮を促通させる手技。

拮抗筋の等張性収縮から主動筋の等張性収縮を行わせる。

【遅い送運動保持】

筋力強化、特に安定性の向上を目的として行う

拮抗筋の等張性収縮の次に等尺性収縮で筋収縮を促す。続いて主動筋の等張性収縮をおこない等尺性収縮を促す。

【リズム的安定化】

等尺性収縮のみ用いた逆運動

拮抗筋の等尺性収縮から始め主動筋の等尺性収縮で終る

拮抗筋と主動筋の間で交互に等尺性収縮を行うことにより同時収縮が促通され安定性の向上が得られる。

 

梨状筋のストレッチ

【方法①】(右ストレッチ)

患者背臥位で両下肢伸展位。セラピストは左下肢を一方の手で固定し、他方の手で右膝関節を持ち上げて股関節を屈曲・内転・内旋させる。伸張感を感じたところで止めて持続伸張をする

 

【方法②】(右ストレッチ)

患者背臥位で左股・膝屈曲位として右下肢の上に交差させる。セラピストは一方の手で右膝を、他方の手で下腿遠位部を保持する。股関節を屈曲させながら内転・内旋させる。伸張感を感じたところで止めて持続伸張をする

 

【注意】ストレッチの肢位が、梨状筋症候群の誘発テスト肢位であるため、痛みや神経症状の増悪する所までは行わない

 

●リラクゼーション

【保持リラックス】

等尺性収縮を用いてリラクゼーションを得る手技

股関節を内旋していき可動域制限のある所で短縮した梨状筋に等尺性収縮(股関節外旋)をさせる。次いで力を抜くように指示し、リラクゼーションが得られたら自動運動で新たな可動域まで動かす。この手順を反復して可動域を改善する。

【収縮リラックス】

保持リラックスと同様の手技だが、等尺性収縮でなく等張性収縮を用いる

PNFを利用した方法もある。PNFパターンを応用すると、股関節の伸展─内転─外旋パターンの中で伸張させながら、最大収縮を行わせる

 

梨状筋のマッサージ

【方法①】

患者腹臥位。セラピストは大転子先端を確認したら、そこから仙腸関節へ向かって母指を滑らせる。梨状筋は大転子から仙腸関節に向かって扇状に広がっているため、同様の操作を繰り返し行い全体を揉捻する

【方法②】

患者腹臥位。セラピストは大転子先端を確認したら、そこから仙腸関節へ向かって2cm内側に母指を置く。梨状筋に向かって垂直に圧を加えたら、上下に梨状筋を横断するように母指を揺らす。

【方法③】

患者腹臥位で、施術側の膝関節を90°屈曲位とする。セラピストは一方の手根部で、梨状筋の大転子付着部に近い筋線維を圧して固定する。他方の手で下腿遠位端を把持し、股関節を内旋させる。この操作で梨状筋の付着部の筋線維が圧迫・伸張される

 

梨状筋の運動点(モーターポイント)

 

梨状筋のトリガーポイント

梨状筋に現れるトリガーポイント。×印の筋膜内に索状硬結が生じると、赤塗りの所に痛みが現れる。

この索状硬結を圧すると痛みが再現され、局所麻酔薬の注入で除痛される

 

 

 

薄筋(gracilis m)と腰痛

 

 

 

●概要

薄筋は他の内転筋と同じ機能を有するが、それに加えてわずかな膝屈曲を補助する。

水泳の平泳ぎで作用する

 

●薄筋と腰痛との関係

股関節内転筋(薄筋を含む)の一側の緊張や短縮は、同側の骨盤を挙上させる。骨盤の高さの非対称性は腰部筋群のストレスにつながる

 

●起始 ─ 停止

起始

停止

恥骨下枝・坐骨結節

脛骨粗面

 

●作用

股関節の内転

膝関節の屈曲・内旋

 

●神経支配

閉鎖神経 - 前枝(L2-L3)

 

●薄筋の筋力強化

【一般的な方法】

左右の大腿をお互いに引きつける運動で鍛えられる

【遅い逆運動、遅い送運動保持、リズム的安定化】

恥骨筋を参照

 

薄筋のストレッチ

【方法】(右ストレッチ)

患者背臥位で左股関節を外転位。セラピストは患者の右下肢を持ち股関節を外転させていく。伸張感を感じたところで止めて持続伸張をする。

 

 

●リラクゼーション

恥骨筋を参照

 

薄筋の運動点(モーターポイント)

 

運動点とは運動神経の末梢がその支配する筋に進入する点あり、薄筋では図の位置で閉鎖神経 - 前枝が侵入する。

運動点での圧痛はより近位の病巣を表すといわれている。閉鎖神経 - 前枝の障害好発部位はL2-L4の椎間孔・脊柱管病変、骨盤骨折、出産などがある

運動点への経皮的電気刺激は、わずかな刺激量で筋の著明収縮が得られるため、廃用性萎縮の予防に利用できる。

 

 

●薄筋のトリガーポイント

薄筋に現れるトリガーポイント。×印の筋膜内に索状硬結が生じると、赤塗りの所に痛みが現れる。

この索状硬結を圧すると痛みが再現され、局所麻酔薬の注入で除痛される

 

 

 

長内転筋(adductor longus m)と腰痛

 

 

 

●概要

股関節の内転に働く筋肉

 

●長内転筋と腰痛との関係

股関節内転筋群(長内転筋を含む)の一側の緊張や短縮は、同側の骨盤を挙上させる。骨盤の高さの非対称性は腰部筋群のストレスにつながる

 

●起始 ─ 停止

起始

停止

恥骨結節

大腿骨・後面中央 

 

●作用

股関節の内転

 

●神経支配

閉鎖神経 - 前枝(L2-L3)

 

●長内転筋の筋力強化

【一般的な方法】

背臥位、両下肢伸展位で左右の大腿をお互いに引きつける運動で鍛えられる

【遅い逆運動】

筋力強化を目的として行う

拮抗筋(外転筋群)の収縮を主動筋(長内転筋)の収縮に先立って行わせ、主動筋の収縮を促通させる手技。拮抗筋の等張性収縮から主動筋の等張性収縮を行わせる。

【遅い送運動保持】

筋力強化、特に安定性の向上を目的として行う

拮抗筋の等張性収縮の次に等尺性収縮で筋収縮を促す。続いて主動筋の等張性収縮をおこない等尺性収縮を促す。

【リズム的安定化】

等尺性収縮のみ用いた逆運動

拮抗筋の等尺性収縮から始め主動筋の等尺性収縮で終る

拮抗筋と主動筋の間で交互に等尺性収縮を行うことにより同時収縮が促通され安定性の向上が得られる。

 

長内転筋のストレッチ

【方法】(右ストレッチ)

患者背臥位で右股・膝関節屈曲位、左下肢伸展位とする。セラピストは左下肢を一方の手で固定し、他方の手で右膝関節を持ち上げて股関節を屈曲・外転・外旋させる。

 

 

●リラクゼーション

【保持リラックス】

等尺性収縮を用いてリラクゼーションを得る手技

股関節を外転していき可動域制限のある所で短縮した恥骨筋に等尺性収縮(股関節内転)をさせる。次いで力を抜くように指示し、リラクゼーションが得られたら自動運動で新たな可動域まで動かす。この手順を反復して可動域を改善する。

【収縮リラックス】

保持リラックスと同様の手技だが、等尺性収縮でなく等張性収縮を用いる

PNFを利用した方法もある。PNFパターンを応用すると、股関節の屈曲─内転─外旋パターンの中で伸張させながら、最大収縮を行わせる

 

長内転筋のマッサージ

【方法】

患者背臥位、施術側の股関節外転・外旋位、膝関節軽度屈曲位とする。セラピストは母指もしくは四指を大腿骨内側遠位端に置く。筋肉に圧を加えたまま恥骨結節の手前まで手を滑らせる。この操作を大腿骨の開始場所を近位へとずらしながら複数回行い、内転筋全体をマッサージする

 

長内転筋の運動点(モーターポイント)

 

運動点とは運動神経の末梢がその支配する筋に進入する点あり、長内転筋では図の位置で閉鎖神経 - 前枝が侵入する。

運動点での圧痛はより近位の病巣を表すといわれている。閉鎖神経 - 前枝の障害好発部位はL2-L4の椎間孔・脊柱管病変、骨盤骨折、出産などがある

運動点への経皮的電気刺激は、わずかな刺激量で筋の著明収縮が得られるため、廃用性萎縮の予防に利用できる。

 

 

●長内転筋のトリガーポイント

長内転筋に現れるトリガーポイント。×印の筋膜内に索状硬結が生じると、赤塗りの所に痛みが現れる。

この索状硬結を圧すると痛みが再現され、局所麻酔薬の注入で除痛される

 

短内転筋(adductor brevis m)と腰痛

 

 

 

●概要

股関節の内転に働く筋肉

 

●短内転筋と腰痛との関係

股関節内転筋群(短内転筋を含む)の一側の緊張や短縮は、同側の骨盤を挙上させる。骨盤の高さの非対称性は腰部筋群のストレスにつながる

 

 

●起始 ─ 停止

起始

停止

恥骨・下枝と坐骨下枝の境

大腿骨・後面上部 

 

●作用

股関節の内転・股関節70°までは屈曲・股関節70°以上は伸展

 

●神経支配

閉鎖神経 - 前枝(L2-L3)

 

●短内転筋の筋力強化

●ストレッチ

●リラクゼーション

●マッサージ

長内転筋を参照

 

短内転筋の運動点(モーターポイント)

 

運動点とは運動神経の末梢がその支配する筋に進入する点あり、短内転筋では図の位置で閉鎖神経 - 前枝が侵入する。

運動点での圧痛はより近位の病巣を表すといわれている。閉鎖神経 - 前枝の障害好発部位はL2-L4の椎間孔・脊柱管病変、骨盤骨折、出産などがある

運動点への経皮的電気刺激は、わずかな刺激量で筋の著明収縮が得られるため、廃用性萎縮の予防に利用できる。

 

 

●短内転筋のトリガーポイント

短内転筋に現れるトリガーポイント。×印の筋膜内に索状硬結が生じると、赤塗りの所に痛みが現れる。

この索状硬結を圧すると痛みが再現され、局所麻酔薬の注入で除痛される

 

大内転筋(adductor magnus m)と腰痛

 

 

 

●概要

股関節の内転に働く筋肉。水泳では平泳ぎで使われる

 

●大内転筋と腰痛との関係

股関節内転筋群(大内転筋を含む)の一側の緊張や短縮は、同側の骨盤を挙上させる。骨盤の高さの非対称性は腰部筋群のストレスにつながる

 

●起始 ─ 停止

起始

停止

坐骨結節、坐骨・下枝

大腿骨・後面中央、内側上顆

 

●作用

股関節の内転・外旋・伸展

 

●神経支配

閉鎖神経 - 後枝(L2-L4)深部

坐骨神経(脛骨神経)(L4)浅部

※大内転筋は坐骨神経から直接筋枝が出るが、その神経は脛骨神経由来のものである

 

●大内転筋の筋力強化

●ストレッチ

●リラクゼーション

●マッサージ

長内転筋を参照

 

大内転筋の運動点(モーターポイント)

 

運動点とは運動神経の末梢がその支配する筋に進入する点あるり、大内転筋ではの位置で閉鎖神経が侵入する。坐骨神経の侵入部位は

 

運動点での圧痛はより近位の病巣を表すといわれている。閉鎖神経障害好発部位はL2-L4の椎間孔や脊柱管病変、骨盤骨折、出産などがある。

坐骨神経は、L4の椎間孔・脊柱管病変、梨状筋下孔などで障害されやすい

 

運動点への経皮的電気刺激は、わずかな刺激量で筋の著明収縮が得られるため、廃用性萎縮の予防に利用できる。

 

 

●大内転筋のトリガーポイント

大内転筋に現れるトリガーポイント。×印の筋膜内に索状硬結が生じると、赤塗りの所に痛みが現れる。

この索状硬結を圧すると痛みが再現され、局所麻酔薬の注入で除痛される

 

 

 

 

圧痛

 

腰部圧痛の出現頻度

腰部における圧痛は①〜④で頻発する

腰痛患者では②に45%、③に40%の頻度で圧痛が認められ、多くは片側性

非腰痛患者では部位①に35%、③に55%、④に35%の頻度で圧痛が認められ、多くは両側性

 

①の圧痛

この部に存在する筋肉は、外層から「僧帽筋下部線維・広背筋・最長筋・棘筋・多裂筋・(短・長)回旋筋」であり、筋肉の過疲労が痛みの原因となる

②の圧痛

この部に存在する筋肉は、外層から「広背筋・下後鋸筋・最長筋・内腹斜筋・腹横筋・棘筋・多裂筋」であり、筋肉の過疲労が痛みの原因となる

③の圧痛

この部に存在する筋肉は、外層から「広背筋・腸肋筋・内腹斜筋・腹横筋」であり、筋肉の過疲労が痛みの原因となる

③の圧痛は、外側皮枝が腰背筋膜や腸肋筋を貫通しており、絞扼を受けやすい構造にある。腸肋筋の緊張が高ければ、リラクゼーションなどで緊張を軽減させる

④の圧痛

この部に存在する筋肉は「中殿筋」である。中殿筋の過疲労で同部の痛みが生じる

中殿筋の付着部であるこの部位は、大殿筋など他の筋肉に覆われることがなく、筋肉そのものも薄い。体表からの刺激は骨性基盤の腸骨翼に伝わり、上殿神経や上殿皮神経を圧迫させる。慢性的に圧迫される環境があれば痛みの原因となるため取り除く。打撲などによる皮下出血は遅発性の神経障害を起因すため早急に除去。

上殿皮神経は第1-3腰神経後枝の外側枝より発生する。経皮電気刺激の電極は上位腰椎の出口と、神経末端部に置いて除痛を計る。

上殿皮神経は横突起間より外下方へ走行し、腸肋筋を貫き腸骨稜へ向かう。腸肋筋の緊張は神経を絞扼させ、上殿皮神経の支配領域に痛みを生じさせるため、緊張があれば取り除く。同筋の絞扼によるものでは神経貫通部である2-4腰椎棘突起の2横指外側に圧痛および、上殿部へ向かう放散痛が認められる。

 

 

⑤ 棘突起

棘上靭帯や棘間靭帯の損傷で痛みを生じる

ヘルニア膨隆による神経根圧迫のある高さで、棘突起の圧痛を認めることがある

⑥ 横突起の側面

第3腰椎横突起の側面には硬結が生じやすく、圧痛をしばし認める

この部に付着する筋は、「腰方形筋最長筋横突間筋多裂筋」があり、多裂筋が関与しているとも言われている

⑦ 横突起間

この部の椎間孔から現れる神経根障害で痛みを生じる

圧痛により下肢放散痛を認めることがある

側臥位にて横突起間を椎間孔方向に圧迫を加えると、より圧痛を確認しやすい

椎間関節面の不適合でも圧痛が生じる、この場合の圧痛は限局性である。椎間板狭小化の頻発するL5-S1椎間関節で上関節突起が上方偏移を起こしていることがあり、圧痛を認めやすい

⑧ 梨状筋下孔

坐骨神経の出てくる梨状筋下孔部で圧痛がみられる。圧痛は下肢へまで放散することがある

圧痛部を持続的に圧迫し続けることで、下肢痛が軽減するという症例がある

この部の圧痛は、梨状筋下孔部での絞扼だけでなく、より近位での障害でも生じる

 

 

 

 


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