■ 骨折後のリハビリ!!当院での流れ
骨折後のリハビリはどのような事をされるのですか?という、問い合わせがありましたので
当院で行っている骨折のリハビリ内容をご紹介したいと思います
ここでは、とても多い骨折の一つである、腕の骨折のリハビリを取り上げます
骨折をすると、皆さんもご存知かと思いますが骨を付けるためにギブス固定を行います
ギブスで固定をすると、大抵の方がギブスが外れるまでは安静にしている事が良いと考えられるようですが
安静にしていなければならないのは、ギブス固定をしている部分だけで、それ以外の場所(指や肩など)は受傷後3日目くらいからリハビリを行っていくことが治療期間を短くすることにつながります
受傷後3日目頃からは、関節を動かすリハビリなどを行っていきます。
①指を動かす
通常この場所の骨折では、指を含めてのギブス固定はしませんので、動かせる指の屈伸・開閉運動を行っていきます。
ギブス固定期間中に安静にしすぎて指を動かさないでおくと、3〜4週間後のギブスを外した時には、指が動かしづらくなってしまうためです。
注
指の屈伸運動(特に親指)に伴って、骨折した部分に痛みを感じる時には、指の運動は中止します。
これは、指の腱が骨折断端部に擦れて痛みが出ている場合が多く、無理に運動を行うことで腱が傷ついてしまう恐れがあるためです
②肩を動かす
手首の骨折では肘までギブス固定をすることが多く、三角巾で腕全体をつるします。三角巾で腕をつるすと大抵、患者さんは腕を使わなくなるため、肩の関節も硬くなってしまいます。これを予防するために、肩を動かします。
ご自宅で行うときは、肩を毎日1回以上、6方向へ動かすようにします。
肩というのは3次元方向に多彩な運動が出来ますが、その運動はすべてこの6方向の動きの組み合わせであるので、この運動を重点的におこないます。
③むくみの除去のマッサージ
手首部分を骨折すると大抵、手のひらや指全体がむくんできます。このむくみを放置しておくと、手首や指の関節が硬くなる原因になりますので、予防のためにも、マッサージでむくみを除去していきます
方法は、怪我をしていない方の指でむくんでいる指先をつまみます。つまんだまま指先から手首の方向に向かって、むくみを押し出すようにマッサージをします。
全ての指にこのマッサージを行います。
マッサージを行った後は指も細くなりますが、すぐに重力によって指先に水が溜まってしまいますので、むくんだら再びマッサージを行います。
④手を心臓より高い位置におく
ケガをした側の手を心臓より高い位置におく事でも、指や手に生じたむくみを引かせる事ができますので、何もしていない時にはなるべく高い位置に手をおくようにします
⑤筋力訓練
ギブス固定を行うと、1週間でギブスはぶかぶかになってしまいます。これは、ギブス固定をすることで動かせなくなった腕の筋肉が細くなるためです。通常3〜4週間の固定で、腕の太さは2〜3cm細くなってしまいますが、それをもとの太さに戻すためには3ヶ月以上のリハビリ期間が必要となります。
ですので、ギブス期間中に腕の筋力が落ちないように、筋力訓練を行います。
注
受傷後間もないこの時期の筋力訓練(特に手)は、対象とする筋肉を誤ると骨折面に影響がでることもあるので、ご自身の判断では行わずに必ず担当の先生の許可を得てから行ったほうが良いでしょう。
⑥低周波
骨折部の痛みが強いと、その周りの筋肉は過剰に緊張してしまい循環障害の原因ともなりますので、痛みを緩和させる目的で低周波を流すことがあります。
⑦冷却
骨折をした近くの関節では、関節内の温度が上昇して、最悪は軟骨や関節包の変性を生じさせることがあるため、出来る範囲内で、受傷後3〜4日くらいは冷却を行います。
⑧関節の遊びを獲得
1〜2週間が経過し、むくみが軽減してきたら、関節の遊びを出すリハビリを行うことが出来ます。
このリハビリは自分一人ではできないため、来院して行うことになります
⑨肘のリハビリ
2〜3週間が経過すると、手から肘まで行っていたギブス固定の肘部分を外せるようになりますので、肘のリハビリを開始します。
肘の場合、多くは伸ばす方向への運動に制限を生じやすいことから、伸ばす方向への運動を多めにリハビリを行います。
ご自宅で行う場合は、肘を伸ばす時は同時に指を広げ、肘を曲げる時は同時に指を曲げながら行うと良いでしょう。
肘を曲げる運動では指が肩に触れるのを目標に行っていきましょう
⑩低周波・筋力訓練
肘関節のギブスが外れれば、肘関節部に露出する筋肉に低周波を流すことが出来ます。
ここには、指や手首を曲げ伸ばしする筋肉が集中していますので、筋肉の力を引き出すのに適した出力で低周波を流しながら、筋力訓練を行います。
⑪皮膚感覚の弱化を予防
ギブス固定を行うと固定された部分の皮膚は、外部から通常入力される触覚・圧覚・痛覚などの情報がなくなるため、感覚神経が弱化していきます。
この皮膚感覚の弱化を予防するために、ギブスと皮膚の間から感覚神経を刺激していきます
骨折の状態によって固定期間は違いますが、無事にギブスが外れたら手首周りのリハビリです
⑫手首のリハビリ
手首の関節を軟らかくする運動や、筋力訓練などを行います。
ご自身で行う場合は、以下の6方向へ運動を行うと良いでしょう
⑬指のリハビリ
指のリハビリにも色々な種類がありますので、ご自身で出来るリハビリ方法だけを紹介させていただきます
手軽に出来てお勧めな運動は、100円ショップなどでも売っているゴムボールでの運動です
ころがす : ボールを転がしながら、手のひらのいろいろな場所でボールを押しつぶします。
日常生活ではノートを押さえたり、包丁で切るものを押さえたりする時に必要な力になります。
はさむ : 車のギアをチェンジ、紐を結ぶ際などに使われます
つまむ : 鍵をつまむ、ペンを握るなどの、指の動作の中でもとりわけ重要な働きのものがあります
にぎる : コップをにぎる、バケツをにぎるなど、日常頻繁に使われる動作になります
普段の生活でよく使われる動作を手軽に訓練出来ますので、当院では患者様にもお勧めしています
⑭癒着の除去
骨折部の周辺というのは、内出血によって皮膚や腱が癒着してしまい、痛みが生じやすいものです。
痛みの強い部分の皮膚を、上から圧っしながら上下左右に動かしてみた時に、皮膚の動きが極端に悪いところは、その部分が癒着している可能性がありますので、重点的にマッサージを行います
⑮その他、日常生活訓練、神経と筋肉の協調運動訓練、皮膚の潰瘍予防など、状態にあわせたリハビリを行っております
かいつまんでの紹介ではありましたが、当院でのリハビリの流れになります。
当院ではギブス固定中からリハビリを行っていますが、他の施設によっては固定期間中は絶対に安静という所もあります。骨折の状態や全身状態によっては当然、早期からのリハビリは行えない場合もありますので、どれが正しいとは一概にはいえません。
ただ当院が固定期間中から早期リハビリを行う理由は、早期リハビリを行うことで患者様の治療期間の短縮や、有限である医療保険の縮小につながると考えているからです。
特に怪我をされた患者様の治癒を考えた時、リハビリの開始時期が遅くなれば遅くなるほど、関節を構成している組織がもとの状態には戻りづらくなりますし、またそれを戻そうとする場合、早期リハビリを行った時とは比較にならないほど大きな力を、関節に負担させてリハビリを行うことになります。こうなるとリハビリを受ける患者様自身に膨大なエネルギーが求められることになります。
様々な長所・短所を配慮したうえで、当院では可能な限り、加速的リハビリテーションを実施しております。
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