トップ > 腰痛の話(目次) > 腰痛と内臓疾患 腰痛と内臓疾患 腰痛は極めてありふれた訴えで、日本人の訴えの中で最多とも言われています。 そんな腰痛の中には、内臓疾患の影響として腰痛が現れることもあり、注意が必要です。 次の病気では、症状の一つとして腰痛が現れることがあります。 消化器系の病気 : 胃潰瘍、胆石症、胆のう・胆管炎、虫垂炎、慢性膵炎、十二指腸潰傷、大腸憩室 泌尿器系の病気 : 腎臓・尿路結石、泌尿器の癌、膀胱炎、腎盂腎炎、前立腺肥大症 循環器系の病気 : 腹部大動脈解離、閉塞性動脈硬化症 婦人科系の病気 : 子宮筋腫、子宮・卵巣癌、卵巣腫瘍、月経困難症、更年期障害 その他の病気 : 風邪、インフルエンザ、帯状疱疹、免疫力低下 その他、うつや妊娠、骨粗鬆症でも腰痛は出ることもあります。 重大なものでは、がんや腹部大動脈瘤のように生死にかかわる病気のサインとして出る可能性もあります。 腰痛が長く続く、発熱がある、腹部などほかの部位に痛みがあるときにはとくに注意が必要です。 そのような場合は、一度病院で診察を受け、腰痛以外に病気がないかどうかを調べるようにしましょう。 ツイート 膵臓癌や慢性膵炎からくる腰痛 腰痛を起こすお腹の疾患は、消化器系統の疾患が多いようですが、そのなかでも比較的お腹の奥の方、つまり腰に近いほうの疾患に多いという結果が出ています。当然といえば当然で、これはみなさんも比較的想像しやすいのではないでしょうか。 具体的には膵臓の疾患が多く、膵臓癌や慢性膵炎といった疾患で発生します。 膵臓癌では癌細胞が大きくなると膵管が圧迫されて炎症がおこります。そうなると左の背中に痛みが現れます。なかには胸や肩にまで痛みが広がる場合もあります。 膵臓が活動する食後や飲酒後に毎回この様な痛みが起こる場合は、一度病院で診てもらうことをおすすめします。 大腸疾患からくる腰痛 大腸の疾患にも腰痛を起こす場合があります。大腸憩室(だいちょうけいしつ)という疾患がそれで、大腸の一部が外に向かってポケット状に突出し、その突出した部分に炎症が起こると激しい痛みが生じます。 通常は、腹痛や下血が主な症状ですが、腰痛で発症することもあります。 大腸憩室症は欧米人に多い病気でしたが、最近では日本人にも増加して、10人に1人の頻度でみつかるようです。 虫垂炎からくる腰痛 虫垂炎(盲腸)からくる腰痛もあります。 虫垂炎では上腹部及び右下腹部の痛みが知られていますが、人によって虫垂が大腸の裏側、つまりお腹の深い所に廻りこんでいる場合があり、その結果腰部の痛みとして感じられることがあります。 症状はへそ周囲の腹痛、吐き気、嘔吐などで始まるのが普通です。 虫垂炎が起こる原因はまだ分かっていませんが、10〜30歳に多いことが分かっています。 胃潰瘍からくる腰痛 胃潰瘍では自覚症状としてみぞおちの痛みや、むねやけなどを訴えます。食後1〜2時間後に起こる痛みが特徴で、潰瘍痛といわれるきりきりする痛みです。 重症になると吐血や下血を起こすことがあります。 胃潰瘍で腰痛になったという方がおられますが、これは腰に近い内臓である膵臓にまで炎症が及んで、腰や背中に痛みが生じることが多いようです。 十二指腸潰瘍からくる腰痛 十二指腸潰瘍は青壮年期に多く発生する病気ですが、近年では小中学生などにもストレスが多いためか十二指腸潰瘍が増えているようです。 自覚症状はみぞおちから上腹部右側辺りの痛みです。食後3〜4時間が経過した空腹時および夜間に腹痛が起こり、食事をすると一時的に症状が治まります。(胃潰瘍では食後の痛みが特徴です) 十二指腸は比較的背中側にあるため、潰瘍が後ろにできた場合などは、背中や腰に痛みが現れることがあります。 腰痛だけでなく、空腹時の上腹部痛・むねやけ・げっぷなどがある場合は、一度検査をされると良いと思います。 胆石症からくる腰痛 胆石症とは、肝臓で作られた胆汁の通り道である胆道に結石が生じて、さまざまな症状が出たものをいいます。 結石のできた場所によって、病気の名前や症状も異なりますが、吐き気・嘔吐・右上腹部痛が特徴です。 右上腹部痛は腰から背中、さらには右肩にまで広がることもあり、胆石仙痛と呼ばれる激しい痛みのため、大量の汗が出ることがあります。 痛みは、食後1〜2時間後に起こることが多く、通常は30分から数時間で消えていきます。 食事は食物繊維のほか、結石の生成を抑えるビタミンC(イチゴ、ミカン、ブロッコリー)やビタミンE(ウナギ、カボチャ、アーモンド)などの摂取がすすめられます。 抵抗力の低下でおこる腰痛 糖尿病の方やリウマチなどで、ステロイド・免疫抑制剤などを服用されている方は抵抗力が落ちていることが多く、腸内細菌が腸外に出て、周囲の筋肉(腸腰筋)につくことがあります。 その結果、腸腰筋膿瘍という症状を引き起こして腰痛を発症します。 腸腰筋は腰に付いている筋肉ですので、腰痛を起こしてくるわけです。 閉塞性動脈硬化症(腹部大動脈瘤など)からくる腰痛 動脈硬化症では、動脈の内側が細くなりその先の血流が悪くなります。 血流が悪くなることで障害を受けやすいのは、腹部から下肢(足)にかけてです。 下肢ではとくに足先の冷感やシビレがおこり、足背動脈が弱くなったり、脈が触れなくなることがあります。 足背動脈の拍動は、足関節の前面(足の甲側)で確認することが出来ます。 左右の足に同時に起こることはないので、両足を比べると、その差は分かります 症状が進行すると、歩行中に下肢が痛くなり歩けなくなることがあります。休むと血流が改善して痛みがきえるので歩けるようになりますが、再び歩くと痛みだします。 間欠性跛行(かんけつせいはこう)と呼ばれる症状です。 この病気は動脈硬化が基礎となっているため、動脈硬化性の他の病気を併発することがあります。 心筋症(心臓の動脈硬化)、脳梗塞(脳の動脈硬化)、腹部大動脈瘤(腹部の動脈硬化)などです。 それぞれ致命的な病気です。 50〜70歳の男性に好発し、女性は病気全体の10%ほどです。 ヘビースモーカーや糖尿病はこの病気の危険因子となります。 動脈硬化で腰痛が起こる理由は、腹部の大動脈にできた瘤が腰の神経を圧迫するためです。 瘤が膨らんで神経を圧迫すると、安静にしていても血管性腰痛として脈を打つような腰の痛みを感じます。 腹部大動脈瘤が破裂すると激しい腹痛や腰痛を引き起こし、高い確率で生命が危険にさらされますので、破裂する前の腹部大動脈瘤の発見が重要になります。 おへその周辺に拍動性の瘤を触れたり、血管性の腰痛がおこる場合には、一度検査をされることをおすすめします。 悪性腫瘍(がん)が関係する腰痛 細胞が自立性を持って発育・増殖し、血管やリンパの流れにのって、他の臓器に移動し、生命の危険を及ぼすものを悪性腫瘍と呼びます。 腰骨にできた悪性腫瘍では、当然腰痛が生じます。 原因もなくいつの間にか腰に痛みが出ていた、痛みがなかなかひかない、夜間の痛みで睡眠が妨げられたりする、背骨を押したり叩くと痛みが増す、などの症状があるようでしたら注意が必要です。 消化器の悪性腫瘍が末期に差し掛かり、背骨に転移することもあります。背骨に転移するのは大腸癌、胃癌、膵臓癌、前立腺癌などが多いようです。 「腰が痛くて最近は食欲も進まない・・・」という方は、痛くて食欲が進まないのではなく、消化器疾患により食欲が進まなくなっていて、更に病気が進行して腰痛まで出たという考え方も、一度されてみる必要もあると思います。 子宮筋腫からくる腰痛 子宮筋腫は子宮壁に発生する良性の腫瘍です。稀に悪性のものもあります。 35歳以上の女性の15〜30%に子宮筋腫があるといわれています。 無症状で治療の必要がないものが多いのですが、貧血・過多月経・下腹部痛・腰痛・腹部の突出・便秘などの自覚症状がでてくると日常生活に支障をきたす場合もあります。 腹部の突出や、下腹部の瘤に触れたことで子宮筋腫に気づくことがあるようですが、そのような場合でも卵巣が腫れていることもありますので、子宮筋腫だと思って油断はせずに必ず産婦人科で診察を受けることが必要です。 また、筋腫が骨盤内の神経を圧迫すると、足にシビレがおこることがありますが、足のシビレは腰骨椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症など腰の病気でもおこりますので、原因を調べて適切な治療を行うことが大切となります。 腎盂腎炎からくる腰痛 尿路感染症の一つに腎盂腎炎があります。急性期では高い発熱・悪寒戦慄・全身倦怠感・排尿痛・嘔吐・腎臓部の疼痛などの激しい症状がでます。 慢性症ではこれほど激しい症状はありません。 腎臓は腹腔の後上部、背骨の両脇に左右一対づつあります。背中に近い部分にあるので、腰背部痛として感じることもあります。 炎症を起こしている側の背中を叩くと痛みが増します。 腎盂腎炎を反復すると、腎機能が低下して働かなくさせてしまうことがあるので注意が必要です。 前立腺肥大症からくる腰痛 前立腺肥大症は、正常ではウズラの卵大ほどの前立腺が、ニワトリの卵ほどに大きくなる病気です。 50歳以上にみられる一種の老化現象で、性ホルモンの不均衡が原因とされています。 症状には排尿障害、残尿、頻尿などがあります。 前立腺の組織が肥大するだけでしたら病気とは言えませんが、こぶが尿道を圧迫して尿閉をおこし、その結果、腎臓病を合併すると、場合によっては生命の危険にまでいたることがあるので注意が必要です。 尿閉は、寒さ・ストレス・お酒・かぜ薬などをきっかけとして起こることがあり、痛みが強いためすぐに気が付きますが、徐々におこる尿閉では悪くなるまで気が付かないことがあるので、かえってやっかいです。 前立腺肥大症から腎臓症を合併すると、腎臓病からの腰痛が出ることがあります。 更年期障害からくる腰痛 更年期障害は、更年期(一般的に40歳代後半から55歳代後半)の女性に起こる健康上の障害です。 ほてり・のぼせ、手足の冷え・発汗・頻脈・動悸・肩こり・疲労感・腰痛手足の関節痛やしびれ・頭痛・頭重感・不眠・憂うつ・イライラ・不安感・めまい・立ちくらみ・膣の委縮症状など症状は多種多様で、幾つかの症状が重複することが特徴です。 老化による生理機能の変化が原因ですが、老化そのものに対するノイローゼが症状を悪化させます。 治療は、ホルモン補充療法(HRT)・漢方療法・自立神経薬・心理療法などがあり、諸症状を緩和させることができます。 骨粗鬆症からくる腰痛 骨が萎縮し、もろくなった状態を骨粗鬆症といいます。老化・閉経後の女性・ステロイドの過剰投与・入院などによる長期の安静などで生じます。 閉経後の女性では、女性ホルモンのエストロゲンが少なくなることが原因となります。 骨量の減少スピードは閉経直後の50歳代が最も早く、60歳代以降では緩やかになりますので、閉経後の時期にいかに骨量の減少を抑えられるかが重要なカギといえます。 骨粗鬆症になると、わずかな外傷で骨が折れることがあり、しりもちをついただけで背骨が潰れる事もあります。 カルシウムやビタミンDの補給、適度な運動が予防につながります。 卵巣腫瘍 卵巣嚢腫と充実性腫瘍に大別され、ほとんどは自覚症状がありませんが、ある程度の大きさになると、下腹部膨満感・腰痛などが出ます・ また他臓器を圧迫することで、便秘や頻尿などの症状が出ることもあります。 卵巣は骨盤の奥深くにあり、大きくなっても痛みという症状が出ずらいので、放って置かれることがよくありますが、80%以上が良性ということは20%近くは悪性の可能性があるということも頭に入れておかなければなりません。 出血や下腹部痛、排尿・排便での不快感などがあれば勿論ですが、多少太ったかなと思った程度でも、婦人科での検査を受けましょう。 |
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こはた接骨院